毎日ブログ更新を自分に課していると、必然的に慢性的ネタ切れという状態になってきます。マラソンを走っていると大体だれもが30km地点あたりでエネルギーが欠乏してきてヨタヨタとなりますが、あれの精神バージョンとでも言えばよいでしょうか。そうなってくると日々、「何かネタがないか」ということを考えるようになり、しまいには本を読んでもしょうもないツッコミを入れてそれをブログ記事にしてやろうという発想になってしまいます。
20年ぶりくらいに読み返した田中芳樹さんのスペース・オペラ『銀河英雄伝説』。その第10巻ではラインハルト・フォン・ローエングラムについに子が生まれます。しかし皇帝ラインハルトだけではなく皇后ヒルダもまた地球教徒からのテロに晒されることになり、皇子出産直前もまたあわや暗殺という上京に陥ります。このときはケスラーの活躍により間一髪暗殺を企む者たちの狙いをくじくことに成功しています。
テロリストの侵入を許してしまった理由は、「わたしがチョコレートアイスクリームなんか買いに行かなければ」と自らを責めるのがマリーカ・フォン・フォイエルバッハ。ヒルダの近侍を務めていました。彼女がヒルダとアンネローゼのいる部屋をよく知っていたからこそ、ケスラーは地球教徒がヒルダたちに襲いかかる直前に現場に飛び入ることができました。
当時上級大将だったケスラーを大佐さんと呼びかけたのは、年齢からいって中佐くらいに見えたのでサバを読んで大佐と言おう、という計算がマリーカの頭の中にあったからだとか。
さて後日、皇子出産後のヒルダは、ケスラーに声をかけます。「マリーカ・フォン・フォイエルバッハは、わたしのたいせつな友人です。彼女から個人的に、やさしい大佐さんに伝言を頼まれています。明日、夕食のご予定は?」
20歳以上も年の離れた大佐さんは少年のように赤面したと書かれています。このマリーカは後にケスラー元帥夫人となります。
マリーカはケスラーを食事に誘ったのか
でも、やさしい大佐さんに伝言を頼んだのは本当にマリーカだったのでしょうか。
テロリストが襲撃してきたのは、自分がチョコレートアイスクリームを買いに行ったからだと謎の因果関係をこしらえてしまったり、「ホクスポクス・フィジブス」などと凶事退散のまじないを唱えたり(ワープすら実用化されている時代なのににずいぶん非科学的)、中佐に見えたので大佐と呼ぼうとしたりと、たった数ページしか出番がないのにずいぶんと天然な印象を受けます。いや、数ページしか出番がないからこそ爪痕を残そうとして濃いめのキャラ設定にしたのでしょうか。
こうした彼女の性格から考えて、「気になる男性が現れたので、夕食を共にしたい」なんていう社会人みたいな発想がすぐに出てくるとは考えにくいです。意識している異性との夕食なだけに、その相手がまさかの憲兵総監・上級大将なだけに、まさかサイゼリヤとかガストとかではないでしょう。まあ銀座とか赤坂みたいなところにある東京カレンダー的なお店に行かないとだめでしょう。そしてその時の会計は誰が払うのでしょうか。高校生くらいの年齢で東京カレンダー的レストランの食事代が払える貯金があるとも思いにくいですし、そもそもどういう店を選ぶべきかといったセンスがあの年齢の女性(というか少女)にあるとは思えません。まさか自宅に招いて両親の手料理を振る舞おうという発想だったのでしょうか。いやいきなり両親に紹介も無謀だ・・・。
そう深読みをすればするほど、ケスラーを食事に誘ったのはマリーカではないだろう、という推測が頭の中に浮かんできます。察するに、ヒルダがマリーカの気持ちに気づいて、いかにも彼女があなたのことを意識していますと気づかせるために食事をセッティングし、部下にレストランを予約させ、食事代は帝室裁量経費(のようなもの)から支出することにしておいて、なおかつマリーカと口裏を合わせたうえで「やさしい大佐さんに伝言を頼まれています」という設定にしたのでは・・・。ヒルダならそれくらいのこと、朝飯前でしょう。
しかしそういう余計な深読みをする自分もずいぶん性格が悪いな・・・。
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