先日、人前でヴァイオリンを披露する経験をまた一つ積むことができました。
「人前」ってどうせ身内だろ、友だちとかだろ、とツッコミが入るかもしれませんが、そんなことは断じてありません。このブログは「友だちいない研究所」。私には友だちがいませんから、「演奏会に来てよ」なんて言える人は完全にゼロ。永遠の0です。でもいいんです。馴れ合いで「バッハが良かった」とか言われるよりも、赤の他人からの冷めきったor熱のこもった拍手のほうがよほど正直なレビューですし、そっちのほうがむしろありがたいですね。
ともあれとにかく舞台に立てるというのは貴重な経験です。私がAKBを羨ましく思うのはまさにこの点にあります。彼女たちは秋葉原のドン・キホーテ8Fにある専用劇場で毎日のごとく「僕の太陽」公演とか「そこに未来はある」公演とか「ただいま恋愛中」公演とか「パジャマドライブ」公演とか「シアターの女神」公演とか「最終ベルが鳴る」公演とか、毎日のごとく公演を行っています。日本で専用劇場を持っている団体は劇団四季と宝塚と、あとはAKBグループだけではなかったでしょうか。毎日が本番というのは、それだけ経験を積む速度が速いということ。さすがに自分の出番が毎日ということはないでしょうけれど(実際には、売れているメンバーはTVに出演して劇場公演にはあまり出てきません)、しょっちゅう舞台に立てるのは、年に数えるほどしか本番がない私には羨ましいことです。
一人で練習していると、当然ながらピアニストの伴奏はありませんから、せいぜいメトロノームを頼りにするくらい。でも「徐々にテンポを落とす、加速する」という柔軟性はメトロノームには全くありません。また、お互いの呼吸をしっかりと合わせてフォルテシモ、なんていう芸当もできません。これすべてピアニストが人間だからできること。そのピアニストも本番直前くらいにしかリハーサルに付き合ってくれません。
というわけで本番1回はやはり練習100回に匹敵するのは間違いですね。舞台に立った時、どれくらい眩しいか、あるいは暗いか。そのせいで譜面はどんなふうに見えるか(劣等生ワイ、暗譜が苦手)。衆人環視のもと演奏を披露すると、体はどのように硬直してしまうか。その時の音は、普段のリラックスした状態の音色とどれくらい開きがあるか。そのような緊張状態のもとでもなお難しいパッセージを弾き切るためにはどれくらいさらっておくとよいか。ピアニストに背を向けて演奏していると、伴奏の音はどんなふうに聞こえるか。やはり緊張しており、自分の演奏に集中しつつもなおピアニストの音をどれほど注意深く聴いていられるか。これくらいならできるだろうと思っていたことが、いざ本番になってみるとどの程度達成できるか。どこまでできて、何ができないのか。また「できなかった」のはたまたまなのか、もう一度時計の針を戻して最初から演奏してみたらやっぱりできないのか。
こういうことは、自宅での練習を100回繰り返しても学ぶことはできません。実際に自分が現場に足を運んで、体を張ってみて初めてわかること。たぶん「本番にはこうなる」というのはAKBのメンバーならすぐに悟るはずですが、何しろ本番の経験が少ないので彼女たちが1ヶ月で学ぶことに私なら軽く数年かかってしまいます。
にしても最近の子供は10歳程度にして「スコットランド幻想曲」まで弾いてしまうとか。そういう人材は実際にはひと握りなのでしょうけれども、そういう子供を見かけるにつれ自分がいかに劣等生なのか身につまされるものがあります・・・。
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