クラシック音楽というのは一音一音にものすごく注意を払って演奏されます。音量の幅が大きく、後期ロマン派のオーケストラ曲ならブルックナーの交響曲のフィナーレのようにうるさいほどに鳴り響くときもあれば、マーラーのように大人数で演奏するわりには意図的にすごく小さな音しか出さないような場面があります。
しかしただ大きければ、小さければ良いというものではなく、音が溶け合っていなければ汚い響きになりますし、小さい音を出したいからといっても音程が正確でなければ作曲家の期待に背くことになるでしょう。
さらには曲の構造というものがあり、これを無視してやりたい放題演奏することも認められません。それをする指揮者もいないわけではないですが、作曲家が本来狙っていた姿を分かったうえであえて踏み外してみる、ということがほとんどです。
こうした個々の音符に対する異常なまでのこだわりは、日本武道館とか東京ドームのような大規模な空間に巨大なアンプを設置して、音をとにかく増幅するアイドルとかロックバンドのコンサートとはまるで違っています。
一方で「音」を極限まで追求するため、演奏家のビジュアルはとくに問題視されない傾向があります。ビジュアル系ロックバンドとかジャニーズに薄毛の人はまずいません。いたら人気が激落ち間違いなし。クラシックでは、指揮者やピアニストが薄毛だろうが体重が100kgあろうが、音がすべてですから、「指揮者〇〇はハゲだから的外れなベルリオーズ演奏になる」「ピアニスト〇〇はデブだからシューマンに向いてない」のような論評がなされることは普通ありえません。せいぜい、「指揮者〇〇はハンガリーの舞曲にたいして共感していないらしい。だから交響曲第◯番の第◯楽章はリズムの処理が曖昧で、残念な仕上がりだった」のような言い方になるのが関の山です。指揮者の見た目に関わらず、チケットやCDが売れる人は売れます。売れない人は売れません。実力次第ですね。
クラシックの世界も「見た目が9割」か
そう思っていました。でも認識が甘かったですね。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため様々なイベントやコンサートが軒並み中止になった2020年以降、多くの演奏家たちもYouTubeに動画を投稿するようになりました。
私もヴァイオリンを弾く手前、演奏の参考にするために色々なヴァイオリニストの動画を視聴しています。
そしてある時気づきました。
若い女性ヴァイオリニストはチャンネル登録者数が多いし、いいねの数も多いし、なにより再生回数も伸びるな。
が、たとえ長いキャリアを誇るベテランであっても、男だったりおばさんだったりすると、チャンネル登録者数は少ないし、いいねの数も少ないし、なにより再生回数も伸びないな。
たとえばバッハとかモーツァルトの有名曲を聴き比べてみるとすぐに分かるとおり、ベテラン演奏家のほうが明らかに音にコクがあり、様々なニュアンスが秘められています。技術的には若手のほうが達者でも、どことなくコンピュータ的というか、音への色付けがまるで「エクセルの黄色」で平板なのです。それで若い子のほうがいいねが多いってどういうこった。
要するにYouTubeの世界は最低限技術レベルがクリアできていればあとは「見た目が9割」であって動画サイトなだけに視覚優先の世界なのでしょう。
昔『人は見た目が9割』なんていう本がありましたが、クラシック音楽も配信プラットフォームが動画サイトだと、そうなってしまうものなんでしょうか・・・。
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