フィクション作品で書いたことが実は未来を予知していたということが往々にして起こります。『バック・トゥ・ザ・フューチャー2』でビフ・タネンが自分の街を作ってしまうというシーンがありますが、じつはこのビフはドナルド・トランプがモデルだとか。それでトランプがアメリカの大統領になってしまうなんて、当時は予想もしなかったでしょう。

この他空を飛ぶ車とか、ホバーボードとかは2023年現在でも実用化されていません。ホバーボードはともかくとして、老人が空を飛ぶ車を運転したら危なっかしい気がします。あなたの家に墜落するかも?

田中芳樹さんの代表作『銀河英雄伝説』では、銀河帝国も自由惑星同盟もお互いのレーダー装置などを無効化する技術が発達しすぎてしまった結果、逆にローテクになっているという設定です。

反重力磁場システムを始めとする各種のレーダー透過装置や妨害電波などの発達、さらにレーダーを無力化する材料の出現により、レーダーが索敵装置として用をなさなくなって数世紀が経過している。索敵は有人偵察機や監視衛星など、古典的な手段に頼るしかない。それらによってえられた情報に、時差や距離的要素を加算して敵の位置を知る。これに熱量や質量の測定を加えれば、不完全ながらも一応の索敵が可能となるのだ。

(『銀河英雄伝説1 黎明篇』より)
つい先日、岸田首相の生成AI動画が日テレのロゴ入りで流されたことがニュースになりました。
これを作ったのは誰でしょうか。おそらくいたずら目的で作ったのでしょう(暇人か)。これならまだ冗談で済んでも、これからはどんどん本物らしさに磨きがかかるようになり、普通の人がちょっと見ただけでは真偽がわからないケースが増えてくるでしょう。

日本人全体を長期間にわたって騙し続けることは無理でしょうけれども、例えば投資銀行の首脳部に限りなく本物に近いフェイク動画を交えたニセ情報を信じこませ、それに基づいて特定企業の株を大量に買い入れたり、売却してしまったりといった手段を用いることで、日本経済に打撃を与えることが可能になるでしょう。ほかにもオリンピックなど大規模イベントの警備責任者を騙してテロを企てるといった方法も考えられます。

こうなってくると、「騙されないためにはどうすればいいか」という対策を考えることになるわけで、私なりに考えてみたものの「ディスプレイに映っている情報を鵜呑みにするのではなく、実際に現場に足を運んで実態・本人を確かめてみる」といったアナログな方法しか思い浮かびませんでした。そうなるとインターネットやAI技術が高度化すればするほど逆にリアル・対面での情報交換が重要になってくるわけであって、インターネットに夢を託したかつての技術者が思い描いていた未来とは逆のことが起こることになります。

あるいは、フェイク動画を見破るためのツールが開発され、さらにそれを回避するための技術が開発され、それでも見破るためのツールがアップデートされ・・・、といったイタチごっこになるのかもしれません。いずれにせよ、「索敵は有人偵察機や監視衛星など、古典的な手段に頼るしかない」に似たような未来が、もうすぐそこに来ているのかもしれません。それにしてもよくできたフェイク動画があったとして、本人が「あれはニセモノだ」と主張したとしても、本当にそうなのでしょうか。案外本物だったりするかも・・・? 私はニセモノなのか本物なのか、判断できる自信がまったくありません・・・。