これは私だけの現象でしょうか、歌詞が聞き取れないのは。たぶんそうじゃないと思います。

東京に住んでいると、大規模コンサートがしょっちゅう開催されています。なにしろ都内だけでも、日本武道館や東京ドーム、代々木第一体育館など1万人以上を収容できる大規模なライブ会場があります。これにさいたまスーパーアリーナとか横浜アリーナとか幕張メッセを加えると会場だらけ!

といってもこういう施設は元々は剣道とか野球とかバレーボールのために設計されているのであって、ロックバンドとかアイドルとかのコンサートとして使っているのは本来の用途ではありません。したがって、もし日本武道館などでライブを実施しようとするなら、音響機器の設置には十分な注意が必要なのは言うまでもないでしょう。まあ日本武道館のように何十年も前から稼働している施設なら、「この場所にこういう出力のアンプを設置すれば客席ではこんなふうに聞こえる」というノウハウが業者の間で共有されているのでしょうけれど・・・。
でも、歌詞が聞き取れないというのはわりとよくあることではないでしょうか?


悲報! コンサートに行ったよ! 歌詞が聞き取れないよ!!

たとえば私はある日、TrySailのコンサートに行きました。新曲行きますと言われて、出てきたのがこの曲。



曲名は「華麗ワンターン」。でもそういう曲名だと知ったのは帰宅してから。その時会場にいた私の耳には「カレー ワンタン」と聞こえました。ああそうか、「ミスター味っ子」とか「孤独のグルメ」みたいに料理がテーマのアニメの主題歌に採用されたんだな。だからカレーとかワンタンとか食品の名前が歌詞に散りばめられてるんだな、と理解しました。

まるで違いました。ターンはゲームの「自陣攻撃ターン」の「ターン」。歌詞が言わんとするのは、ミッションか何かをクリアするのに2ターンも3ターンも要らない、1ターンあれば十分だ、そういう意味でした。カレーもワンタンも無関係でした。

一般的に、コンサート会場で歌詞が聞き取れない理由はいくつか考えられます。
まず音響設備の調整不足です。代々木第一体育館にこれは顕著(個人的経験)ですが、音響が十分に調整されていないと、音がこもりやすくなって歌詞がクリアに聞こえません。逆に東京ドームは音が拡散しすぎて「なんじゃこりゃ」と感じがちです(これも個人的経験)。

反響問題も原因の一つでしょう。大きな会場では、音が壁や天井などの構造物に当たって反響しやすいです。これにより、歌声が混ざり合って歌詞が聞き取りにくくなります。ある日の横浜アリーナでこれに遭遇しました。このアーティストは1曲めは風呂場で歌っているような反響でしたが、2曲めあたりから調整されていました。PAさんが機転を利かせたのでしょう。

観客の騒音もこれまた問題です。大規模な会場では、多くの人が同時に集まります。観客が発する雑音や歓声が、アーティストの歌声をかき消すことがあります。ビートルズはこれが理由で「お客さんって俺たちの音楽を聴きに来てないな。有名人を見物に来てるだけだな」と痛感してコンサートをやらなくなりました。

しかし・・・、これらの難点を考慮したとしても、「華麗ワンターン」の歌詞が聞き取れなかったのは「そういう問題じゃないよね」と考えざるを得ません。べつにTrySailの発音が悪いとか、「華麗ワンターン」がだめだというわけではなく、最近の曲すべてに言えることだと思いますが、歌詞が日常語からかけ離れた語彙で構成されている、しかもかけ離れた語彙+かけ離れた語彙の組み合わせになるとますます理解できなくなる、早口で歌われると大規模会場では音が混濁するなど悪条件が重なりすぎていると思います。

例えば劇団四季なら、こういう感じの歌唱になりますが、これが「普通の日本人のお客さんが、歌詞をきちんと聞き取って理解でき、感動できる」を保証できる水準であって、私の経験上、劇団四季ではこれより早口だったり、あまり使わない単語に出くわしたことはありません(もしそうではない場合は、演出上そうすべき必然性があるときに限られていたはずです)。




それにしても、コンサートに行ったのに歌詞が聞こえなくてチンプンカンプンになる徒労感って一体何なんでしょうね・・・。行くと決めたのは自分ですが、そういうことが積み重なると「もう行くのやめようかな」という気分にだんだん傾いていってしまうのですよ・・・。