新国立劇場バレエ研修所公演「バレエ・コンサート2023」は、この研修所に所属する研修生、予科生によるもの。2023年度は第20期研修生および第15期予科生が入所し、総勢16名がプロのダンサーとなる日を目指してバレエのレッスンをはじめとして様々なトレーニングを積んでいます。
会場で配布されていたプログラムによると、技術研修としてクラシカル、コンテンポラリー、演劇、歌唱などを履修するのに加え、美術史や身体解剖学、栄養学、英語のほか、なんと茶道まで! 能とか歌舞伎じゃなくて茶道なのは謎ですが、一流の人材になるためにはそういう経験も必要なのだろうということは想像できます。
この研修生、予科生の発表の場である「バレエ・コンサート2023」を鑑賞し、これはと思う演目があったので備忘録的に記事化しておきます。
新国立劇場バレエ研修所公演「バレエ・コンサート2023」の繊細優美な「ロマンス」
グノーの「シンフォニエッタ」や「ラ・バヤデール」からのパ・ダクシオンなどに加え、ショパンの『ピアノ協奏曲第1番』から第2楽章を音楽として採用した「ロマンス」。10分ほどの作品です。
プログラムによると、貝川鐵夫さんが振付および指導を担当したもので、日本人の心である花鳥風月をイメージして作られたもの。花鳥風月とは自然の中の美しく風流な事物のこと、および、そのような美しい自然の風情を愛でる風雅な趣味や画題・句題のことを意味する表現を指していう言葉です。
日本人らしい四季の移ろいや、それを愛でる心を踊りで表現することを狙っていたのでしょうか。
作品は暗いステージに下手から光が射し、ダンサーたちがゆっくりと登場するところから始まります。
音楽はこちらです。
この繊細な音楽とともに、ダンサーたちの踊りが紡がれてゆきます。それはさっきまで見ていた古典の動きとはまるで異なるもの。この作品はネットで検索しても動画が投稿されているわけではなく、言葉で説明するのが難しいのですが、様々な動きを通して色々な心情を(おそらくは「もののあはれ」を)表現しようとしていることはわかりました。上演機会はさほど多くないことが想像されるだけに、今後もこれが演目として採り上げられるときはぜひ劇場に足を運びたいと思いました。
また、後半の「ラ・バヤデール」からのパ・ダクシオンもまた見応えのあるもの。アンサンブルの緻密さが今後の課題かもしれません。が、何より黄金の偶像(私は勝手に「黄色い厄介」と名付けている)の動きが全体的に「はまっている」のです。何も知らない人が見たら変なやつが乱入してきただけにしか見えませんが、いえいえバレエ好きの人なら分かるはず。舞台上でこの動きを表現するためにどれほどの研鑽を積まなければならないかを。この記事は2023年12月2日(土)に作成していますが、翌日3日にも2日めの公演がありますからご興味のある方は劇場へ行かれるとよろしいでしょう。
来年3月には第19期生の修了公演となる「エトワールへの道程2024-新国立劇場バレエ研修所の成果-」が予定されています。こちらもぜひ注目したい公演だと思いました。有名バレエ団のプリンシパルの踊りを見るのとはまた違った種類の感動がある、若手たちの表現にこれからも注目していきたいと思います。
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