世の中の様々な仕事には「納期」「締切」というものがあります。これを守らないと、入金が遅れたり支払いができなかったり資金がショートしたり信用を失ったりとろくなことがありません。漫画家の秋本治先生は万が一を想定して常に15ページ程度ストックを作っていると聞いたことがあります。だからなのか、漫画家編集者に言わせると「秋本先生は神」なのだとか。(この言葉は集英社ではないものの、同じくらいの規模がある出版社の編集者さんから直接聞きました。)
私は現在人事とか給与とかいう方面の仕事を行っていますが、「給与の支給日」というのは厳守しなければなりません。例えば11月24日(金)が給与支給日だとすると、3日前つまり火曜日には銀行の専用ウェブサイトに送金データをアップロードしておかなければなりません。送金に3日もかかるのか、と思うかもしれませんが、金曜日の様々な取引たとえばガス代とか新聞代とかの引き落としよりも先に給与が入金されるように(引き落としが先に来るとその瞬間残高がマイナスになって引き落としできない人がいるから)、銀行側でも優先順位付けという作業があるため、3日前に送金するという決まりになっています。
しかし私もこの仕事を行って数年が経過し、引き継ぎのタイミングというものを迎えました。ある日のこと、12月の賞与の計算は厄介なため「10月給与が終わったらすぐに計算に取り掛かりなさい」と引き継ぎ相手に伝え、またその計算方法についても一通りレクチャーを行いました。賞与の銀行データ送金まで3週間あります。計算が面倒でも、3週間あれば楽勝です。
マイペースは悪である
11月下旬、賞与の送金日が近づいてきました。11月20日頃様子を聞いてみると、
賞与の計算は、ほとんど進んでいませんでした。
3週間あったのになぜ? 今まで一体何をしていた??
どうやら他の仕事をしていたようなのですが、そもそも賃金とは支給日に必ず支給されねばならないもの。これが準備できていないとは何事でしょうか?
査定期間中に問題なく勤務している人は満額支給であり、これは一定の計算式に当てはめれば終わりです。そこまではできているものの、慎重にチェックしなければならない「査定期間中に傷病欠勤、育児休業、休職、時短勤務などを取得した人」についてはさあっぱり進んでいません。一応何人かは計算が終わっているものの、「見せてみなさい」と言いながら計算結果をチェックすると・・・。
間違いだらけやんけ!!
育児休業を取得したAさん、休職していたBさんについては対象者チェックから完全に抜け落ちており、「この人はどうなっていますか」と質問してみると、
やっていただけないでしょうか
・・・。
・・・。
・・・。
自分なりに計算してみたがいまいちわからないので、一緒に点検してほしい。これはまだわかる。
自分は一切計算しないで
やっていただけないでしょうか
締切が近づいてるのによくもそんなことを。
しかも賞与は支給額を計算すればそれで終わりというものではなく、社会保険料の控除が適正にできているか、所得税の計算は間違いないか(賞与の所得税額は、前月の給与総支給額から社会保険料を差し引いた金額や扶養人数を勘案して算出する)などのチェックも行わなければなりません。
弊社の賞与は無事支給されるのか小生不安になってきました。
Windows95の基本設計を担当したというマイクロソフトの元プログラマー、中島聡さんは『なぜあなたの仕事は終わらないのか』という本において、「ロケットスタート時間術」を提唱しています。それは、たとえば10日で完了させるタスクが降ってきたときは、最初の2日をスケジュール割り出し日として用い、この2日はロケットスタート期間として2日でほぼ完成まで持っていく。もしもその2日でほぼ完成まで持っていけない場合は、危機的な状況と認識してスケジュールの見直しを交渉する、というもの。
私もこの本を読む前からなんとなくこれに近いやり方を体得していて、「こういう資料を作れ」と言われた場合は最初の2割ができた時点で「こんな骨組みです」とラフなモデルを提示します。8割、9割できたところで「こんなモデルじゃだめだ」と言われたら苦労が水の泡になるため、基本設計の段階でOKをもらっておくというもの。
その他にも、1週間でやれと言われた仕事は水曜の昼から木曜朝までにはほぼ完成にしておきます。そうすれば不測の事態に陥っても1日あればまだリカバリできるだろうという想定です。
・・・というようなことを私の引き継ぎ相手はあまり考えておらず、「他の仕事で忙しかった」「やり方がわからなかった」などを理由にマイペースに進めていたようなのです。あのー、賃金って所定の期日に必ず払うものなんですけど・・・。
マイペースは悪である・・・。
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