ヴァイオリンの買い替えを検討していろんなお店を回っていると、どこもかしこもイタリア製を推しています。マリオ氏製作2005年ヴァイオリン130万円とか、ルイージ氏製作2009年ヴァイオリン110万円とか、同じヴァイオリンなのにフランス製とかドイツ製と比べるとなぜか価格が高いという謎があります。
そんなにイタリア製って偉いものなんでしょうか。ファッションとスポーツカーの世界ではイタリアというブランドは文字通り「ブランド」として成立しています。
しかしその中身というと結構怪しいもので、以前「文藝春秋」に作家の塩野七生さんが「このようなドキュメンタリー番組を見た」という文章を寄稿していました。
それによると、グッチなどの一流ブランドといってもこれに使われる原材料のうちイタリアで製造されたものはごく一部で、大半はアジアや東欧からの輸入品。組立工場ではルーマニアなどからやってきて不法滞在が疑われる移民が低賃金で働かされている。そのことをジャーナリストが問い質し取材を申し込んだが返答はなかった。答えがないのが答えだ、というもの。でもよく考えてみたら100万円のバッグだろうが1万円のバッグだろうが「ものが入る」という機能は等しいはず。99万円の差額は一体何に使われているのか・・・。
スポーツカーの良さも私にはまったく分かりません。フェラーリなんてエンジン音がブーブーうるさいから屁ラーリです。家の近くのちょっと太めの道路でマーチとかプリウスと一緒になって渋滞にはまっています。結局屁ラーリだろうがアルトだろうが混雑した道路で一緒くたになって数珠つなぎ。車は車でしかない。ワハハ。ビル・ゲイツが「ファーストクラスに乗ったからといって早く目的地に到着できるわけではない」と言ってエコノミークラスに乗るのはそういうことなんでしょう。
これと同じく、イタリア製だからいいヴァイオリンだろうというのは、「聴覚障害を乗り越えて完成させた交響曲『HIROSHIMA』に感動した」という感性と近いところにあると思います。
そういうのを、正しい日本語では
俗物
というのです。
日本人もイタリア人もない。いるのは個々の人間だ
イタリア製と言っても玉石混交で、私は過去記事
にも次のように書いています。
対応してくださった店員さんが大変熱心かつ親切で、様々な情報を教えてくれました。
・イタリア製、とくにクレモナのヴァイオリンがもてはやされているが、必ずしも値段と実力のバランスが取れているというわけではない。
・すなわち、そのブランドイメージゆえにイタリア製ヴァイオリンは価格が釣り上がっている。
・そのクレモナだが、ヴァイオリン製作の伝統が名匠ストラディヴァリの死後、長らく途絶えていた。自らもヴァイオリンを弾いていたムッソリーニがその伝統を人為的に復活させた。
・クレモナには今も世界中から多くの職人が集っている。日本人もそうだ。したがって、クレモナのヴァイオリンだからといってイタリアの職人が製作したものとは限らない。
・アジアの職人が製作したものは、欧米人が製作ものより価格が低くなりがちである。しかしそれは単なる「アジア」のイメージで価格がそうなっているだけの話であり、安い=楽器の実力が低いというものではない。
一般的に、価格と本来の価値が不釣り合いな場合、長期的には、価格は本来の価値と釣り合いが取れる水準まで下落するはずです。
しかし、ヴァイオリン業界ではそういったことが起こっていないようなのです。
その結果としてイタリア製ヴァイオリンの価格が高騰しているようです。
「クレモナには今も世界中から多くの職人が集っている。日本人もそうだ。したがって、クレモナのヴァイオリンだからといってイタリアの職人が製作したものとは限らない」というのは先述のファッションブランドの製造工程ともつながるものがあります。要するに「イタリア製だからいいだろう」というイメージが先行して実力不相応な価格設定でも売れてしまうということでしょう。
ヴァイオリンを買うときに心に留めておきたいのは、ウォーレン・バフェット氏の名言です。投資を行っている方なら、彼の名前は一度は耳にしたことがあるでしょう。「投資の神様」とも言われる彼が率いる世界最大の投資会社バークシャー・ハサウェイの株価は、過去50年以上にわたって年率20.5%という驚異的なリターンを達成しています。長年にわたりこのようなパフォーマンスを続けている彼は投資家が肝に銘じるべき数々の名言を残しています。
名言その1「自分に理解できないビジネスに投資しない」
これをヴァイオリンの買い替えに引き付けるなら、「なぜこのヴァイオリンが良いと判断したのか? 合理的に説明がつかないヴァイオリンは買うな」でしょう。なぜイタリア製だったら良いのか。「良い」の定義とは何か? 見た目がいいのか? 音色か? 他のヴァイオリンと比較を十分に行ったうえでの「相対的に良い」という判断なのか?
名言その2「価格はあなたが払うもの。価値はあなたが得るもの」
100万円払ってヴァイオリンを買い替えたとして、その価値は何でしょうか? そもそもヴァイオリンの価値はどこにあるのでしょうか? 100万円分働こうと思うと軽く3ヶ月かかります。それだけのお金を投じても悔いはありませんか?
名言その3「まずまずの企業を素晴らしい価格で買うより、素晴らしい企業をまずまずの価格で買うことのほうがはるかによい」
ならばまずまずのイタリア製と称するヴァイオリンを200万で買うより、日本人や中国人やアメリカ人が作った素晴らしいヴァイオリンを100万で買うことだって賢い選択でしょう。そもそもヴァイオリンづくりという手工芸に国籍ってあるんでしょうか。私は「日本人もイタリア人もない。いるのは個々の人間だ」と判断し、ブルガリア出身の女流作家による作品を最終的に選び抜きました。
それにしてもブログを運営しているお陰で、「店員さんからこんな有益な情報を教えてもらった」ということがきちんと記録として残すことができています。ブログって本当にライフログとしての機能もあるんですね。助かります。
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