プリンくんファン待望の『ポムポムプリン① ぼくたち、チームプリン!』がとうとう発売になりました!私がいたく応援している渡辺麻友さんが大好きなポムポムプリンを私も好きなのでチームプリン漫画の発売を待ちわびていました。

チームプリンとは、ポムポムプリンの友だちであるマフィンやパウダー、ベーグルやスコーンたちの総称です。

スコーン:しっかりものでたよりになるでちゅ

パウダー:チームプリンの良心でちゅ

プリン:365日たべすぎでちゅ・・・

このようなゆるい感じのキャラクター紹介から物語は始まります。

物語といっても別に難しいドラマがあるわけでもなく、ポムポムプリンたちの周りに集まったチームプリンたちが食べたり遊んだり踊ったりニコニコしたりしているという平和なもの。当たり前の話ながら誘拐事件とか殺人事件とか不倫などの要素は一切ありません。

さらには、喧嘩する、仲直りするという葛藤とその解決という起伏もなく、ただただ仲良しグループの終わらない日常をほのぼのと描いています。

これの何がいいのか? いえ、いいんですこれが。


『ポムポムプリン① ぼくたち、チームプリン!』大人の絵本だなあ

小学生ならこれを読んで面白いと思って終わりでしょう。中学生、高校生なら「ケッ」と思うかもしれません。大学生なら読みもしないでしょう。
が、大人になるとこういうフィクションをあくまでもフィクションとして受け止めることができるようになり、「別の人生を歩んでいたら、自分にもそういう人間関係があったかもしれない」という一つのIfとして楽しめます。

実際の人間関係というのはチームプリンのようにうまく行かなくて当たり前。
中学、高校のころまでの仲良しでも一人が国立大学、もう一人が私立大学に進学すると、なぜか国立大学に行ったほうがなんとなく私立大学に進学したほうに優越感を感じ始めたり、先に結婚したほうがまた優越感を持ってそこはかとなく(無意識のうちに)マウントし始めたり、違う業界で働き始めて話が合わなくなったり・・・。さらに言うなら就職して同僚と仲良くなっても転職したら元同僚とは会わなくなります。そうやってくっついたり離れたりを繰り返すのが人間関係。人と人の関係性なんて案外薄いものです。

いつの間にか年賀状だけの付き合いになり、ある時「あいつ死んだってよ」と人づてに知らされたりします。早い人だと30代で死んでしまいます・・・。

話をチームプリンに戻すと、そういう人間関係の不吉な面の影がさすことはなく、ただただ終わることのない日常を謳歌している、『ポムポムプリン① ぼくたち、チームプリン!』は要するにそんな話なのです。

でもただフィクションの世界に逃避してそれで終わりかというとそうでもなく、「パウダーのおはなし」のように現実に生きる私たちにも人間たちの間で生きていくうえで何らかのヒントになる話も盛り込まれています。

うさぎのパウダーは「ちょっぴりはずかしがりや」。だからうまく言葉で相手に物事を伝えることができません。その彼女が思いついたのが、「じょうずに言えなくても 目をみられなくても おもてなしで 気持ちを伝えてみるのね!」。この話の良さというのは子供には分からない。大人になってみて始めてイラストレーターが込めた思いを汲み取れるもの。

その意味で、『ポムポムプリン① ぼくたち、チームプリン!』は生きることに疲れた人、何を見ても既視感しか感じられなくなった人にとっての糧となることでしょう。

それにしても、この本をもしかすると渡辺麻友さんもどこかで読んでいるのでしょうか・・・。読んでいてほしいと思いました。