何をやらせてもうまくいく出来杉君のような人はたまにいます。同じクラスにいると邪魔でしょうがない・・・、ゲホゲッ! 私の学校にもそういう人がいましたが、大学入試の時点で私のほうがどういうわけかもっと偏差値の高い学校へ進学・・・、いやこれは昔の話だからどうでもいいですね。
大体なんでもできてしまうという人といえば、レオナル・ダ・ヴィンチとかベンジャミン・フランクリンとか、いくつか例を挙げることができます。歴史に名を残そうとするとこれくらい傑出した能力がないと難しいのでしょうね。
作曲家ではメンデルスゾーンが「大体なんでもできてしまう人」にあたるでしょうか。裕福な銀行家の家庭に生まれ、すぐれた音楽の才能を幼少期から発揮しています。さらには多数の言語を自在に操り、青年になる頃にはドイツ語のみならず、ラテン語、イタリア語、フランス語、英語を話せるようになっています。詩作や絵画にも関心を持ち、多くの水彩画作品を残しています。私もライプツィヒで実物を見たことがありますがプロの水準に到達しているといってもいいでしょう。
彼の音楽作品はベートーヴェンやモーツァルトに比べるとどうしても一段低いものとみなされがちです。理由は聴いてみればわかります。でも彼には光とか音とか波とか、自然の風景や空気感を音楽で表現できてしまうという稀有な才能がありました。
『交響曲第4番イ長調 イタリア』名盤は
特筆すべきは『交響曲第3番イ短調 スコットランド』とともに名高い『交響曲第4番イ長調 イタリア』でしょう。前者についてはこのブログで何度か記事化しています。後者もまた南国(ドイツから見て)イタリアの雰囲気をうまく捉えた佳作です。なにしろ溌剌とした地中海の雰囲気を想わせる明るい第1楽章、ローマの古代遺跡を見てはるか昔に思いを馳せるような第2楽章、気分は変わって第3楽章は優雅なイタリアの宮廷を描いたかのような気品に溢れています。第4楽章はサルタレロというローマやミラノで流行したという舞曲。
このようにそれぞれの楽章が際立った個性を持っています。・・・余談ながらこうして文章化してみると、自分がどうしてシューマンの交響曲第2番とか第4番を好きになれないのか今わかりました。似たような音楽が連なるからです。
私はこの曲といえば今は亡きクラウディオ・アバドが1967年にロンドン交響楽団を指揮して録音したものを愛聴しています。ヘルベルト・フォン・カラヤンの後を継いでベルリン・フィルの指揮者になった彼はそのことをきっかけに統率力不足が指摘されるなど、もしかするとこれはキャリア選択ミスだったのではと私は余計なことを考えてしまいますが、『イタリア』録音当時の彼はまだ売出し中の30代。この録音ではすべての響きにくっきりとした輪郭が感じられる明晰な仕上がりになっています。ブラームスやベートーヴェンでこの調子なら「ずいぶん気楽なやつだな」と叩かれる可能性があります。しかしメンデルスゾーンの『イタリア』ならそういう個性がむしろ長所になり、30分の曲をあっという間に駆け抜けてくれます。
今なお廃盤にならず、カタログに残り続けているということはかなり立派な録音だということなのでしょう。中古CD店でもかなり高い確率で巡り会えるはずです。数百円程度ですし、『スコットランド』とのカップリングということであれば見かけたら買って後悔はないでしょう。
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