どういうわけか、チェスや将棋のようなボードゲーム、そして数学と音楽の才能は子供のころから開花するものだと知られています。しかし音楽といっても、実質的にはピアノとヴァイオリンを指す場合が多いようです。なにしろ小学生にもなっていない子供がギターを弾いたりトロンボーンを吹いたりすることは体の発育という観点から見て不可能でしょう。
とくにヴァイオリンというのは分数楽器というものがあり、1/2サイズとか1/4サイズとか1/8サイズとか、子供でも弾けるように小型なものがあります。「アンパンマン」を見たり友だちと鬼ごっこをしているほうが絶対楽しいに決まっています。そんな年頃の子供に音階練習をやらせたりエチュードを仕込んだりするのは虐待なんじゃないかと思ってしまいます。
しかし一流音楽大学を卒業してプロを目指すなら(プロになりたいと決意する3歳児なんているはずもない。つまり親の一方的な意志である)、2歳とか3歳から練習をスタートしなければなりません。
『最後の秘境 東京藝大』という本によると、
「ピアノやヴァイオリンを小さい頃から始めたほうがいいというのは、体の理由もあるのよ」楽理科卒業生の柳澤さんが言っていた。「体が作られる時期に練習をすることで、楽器に適した体に成長するの。その時期をのがして後から始めると、もうそれだけで差がついちゃう……。」
それでプロになれなかったらどうするんだろう? と想像してしまいます。大学時代、東京藝術大学の学生たちを自大学に招いて演奏会を企画したことがありました。打ち上げの前に先輩から「おい、卒業後はどうするんですかとか絶対に聞くな」と釘を刺されました。確かに東京藝術大学の学生の卒業後は行方不明者多発とも聞きます・・・。その後の打ち上げで、私は飲みすぎて「進路はどうするんですか」と聞いたような、聞かなかったような・・・。もう随分昔の話ですから全く思い出せません。いや今思い出しました。「オーケストラに就職するんですか」と聞いて「いやー、オーケストラなんて学年で一番うまい人が入れるくらいですよ」と言われました。そして言わなくていいことは本当に言わなくていいと思い知りました。
ともあれ、東京藝術大学に進学するような人であれば中学生のころにはメンデルスゾーンの『ヴァイオリン協奏曲 ホ短調』くらいに着手していなければ厳しいでしょう。となると小学生のうちにモーツァルト。あれ、じゃあ私がいま取り組んでるベリオの「バレエの情景」は・・・?
【悲報】無能ワイ、ヴァイオリン弾きこなす才能がないと思い知る
ある時、ベリオの「バレエの情景」は小学校低学年あたりがコンクールで弾きがちだという噂を耳にしました。そこでヴァイオリンの先生に「そうなんですか」と質問したところ、「そうです」という身も蓋もない答えが返ってきました。
私は大学入学と同時にヴァイオリンを始め、その後途中で中断を挟みながらもなんだかんだで10年以上は指導者からの教えを受けています。にもかかわらず音階練習は小野アンナを行ったり来たりし、クロイツェルはヨタヨタとしか進まず否停滞し、「バレエの情景」も7ページ程度の楽譜のわりには何ヶ月もかかってまだ終わってもいません。
あのー、コンクールに出る子供なら3歳から始めたとして4,5年程度の学習期間で「バレエの情景」を当たり前の顔で弾いてるんですけど。しかも自分よりずっと音の粒立ちが揃ってるんですけど・・・。10年かかってもそこに到達しない自分はまるっきり才能がない、下手の横好き&楽器教室の養分ってことでいいですか?
というわけでやればやるほど、自分がいかに素質がないかを思い知るのがヴァイオリンという楽器です。我ながらよく挫折しないものだと思いますがその労力を別のことに投じていたらもっと自分の人生は変わっていたかもしれません。でも一体どうしろと。
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