「ラブライブ!」シリーズは最近はまた新たな盛り上がりを見せています。『ラブライブ! スーパースター!!』が2021年に放送開始され、翌年には第2期でラブライブ! 優勝という快挙。そして3期生の加入が発表され、第3期のスタートが期待されています。

『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』はOVAが劇場公開され、さらなる劇場版の制作が発表!

『ラブライブ! サンシャイン!!』はなんとまさかの『幻日のヨハネ』という公式スピンオフ作品が登場! 嘘から出たまこととはこのことです。

さらに! バーチャルとリアルをつなぐ『ラブライブ! 蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ』の活動が始まります。

これだけラブライブ! の世界が広がるともうすべて追いかけることはほぼ不可能。自分の推しを見つけて深掘りしていくべきでしょう。
しかも、「スクールアイドルミュージカル」なんていうものまで上演されるのですから期待が高まるではありませんか。

私自身は2023年8月にこの作品を鑑賞したのですが、やはり従来の「ラブライブ!」とは異なった形式での作品であるために、表現というものの難しさを実感しました。


「スクールアイドルミュージカル」、印象はちょっと弱い

記事タイトルから想像されるように、「スクールアイドルミュージカル」の感想は歯切れの悪いものにならざるを得ません。理由は以下のとおりです。

1.キャラ立ちが弱い
アニメの「ラブライブ!」シリーズは、基本的には1クール12話、2クール12話そして劇場版という構成になっています。そうなると合計で10時間程度の物語となります。
そのなかで、たとえば『ラブライブ! サンシャイン!!』なら黒澤ダイヤとか国木田花丸とかのキャラクターや、キャラクター同士の人間関係を描き、そしてアイドル活動を通じてまたその関係性が変わっていったり、そうこうするうちにも時間が流れ・・・、という描写を行っています。

私自身は、9人の個性を深掘りしていくには24話+劇場版でもまだ足りないという考えですが、曲がりなりにもそれなりの時間をかけてキャラクター像を表現しているわけですから、見ていれば黒澤ダイヤがどういう人かというのは把握できます。

他方で「スクールアイドルミュージカル」は、第1幕50分、第2幕50分という尺しかありません(ミュージカルは普通、2幕構成で2時間程度の長さで構成されています)。このなかで椿ルリカとか皇ユズハとか北条ユキノとか、その他10名におよぶキャラクターを描き分けていくのは至難の業です。

兵庫の名門進学校の理事長とその娘(成績優秀)がいる。大阪にも芸能コースを設置した高校があり、理事長とその娘(アイドル部のセンター)がいる。これはまだ初見でも飲み込めます。
しかし100分という時間のなかで描写しようとすれば、せいぜいこの4人くらいの人間関係とか、それぞれの心理に踏み込むあたりで時間切れになるのではないでしょうか。実際問題、この4人以外のキャラクターを「この人は誰で、その人の性格は〇〇で、こういう状況ではこういう振る舞いをする傾向がある」のように説明してみよ、と言われても、各キャラクターが個性を発揮する場面がほとんどない以上は不可能でしょう。つまり特定のアイドルを推すための前提となる「このアイドルはどんな個性の持主なのか?」を知るには、明らかに時間が足りないのです。


2.曲想の限界
『オペラ座の怪人』とか『エリザベート』とか『アナと雪の女王』など、名作とされるミュージカルを鑑賞した方ならご存知のとおり、2時間のなかに様々な曲が盛り込まれています。『オペラ座の怪人』ならたとえばオペラのアリアのような曲、ロック調の曲、ラブロマンスの二重唱・・・。

「スクールアイドルミュージカル」は、文字通りスクールアイドルを扱った作品であるだけに、歌はアイドルソング。当然といえば当然ですが、アイドル曲の次にアイドル曲の次にアイドル曲という構成が不可避であるため、似通った曲が連続してしまうのです。私はつい他にないのか、という思いにとらわれてしまいました。

以上の理由により、「スクールアイドルミュージカル」は必ずしも私の期待を100%満たすものではありませんでした。まあミュージカルといえばヒットする作品よりもヒットしない作品のほうが圧倒的に多い(NHKの『BS世界のドキュメンタリー』「ブロードウェイ ミュージカルの街の半世紀」 でそのような解説がありました)ため、確率的にはアタリよりもハズレに出くわしがちということになります。


だがしかし。私はその程度のことで「ラブライブ!」シリーズを見棄てたりなどしないでしょう・・・。