ヴァイオリンという楽器は買ってくる時点でやたらと高くて驚きます。初心者セットは10万円程度で購入可能ですが、ある程度上達してさらに上を目指したくなると当たり前のように100万、200万といった価格になってしまいます。まるで車のような価格です。じゃあこいつはプリウス並みに走ってくれるのかというとそうでもありません。

さらにベルゴンツィとかグァダニーニとかいう銘器になれば数千万、ストラディヴァリウスやグァルネリなら◯億円もするのはもう金銭感覚がバグってしまいます。調べてみたところ、たとえば新宿区の某新築マンションは66.03平米~74.92平米で1億6千万円。ストラディヴァリウスの勝ち! ふっ、東京のマンションなんて大したことないな。俺はどっちも買えないけどな。

そういう楽器なだけにメンテナンスにも地味にお金がかかります。
私は先日弓2本の毛替えと本体のニスのレタッチを依頼しました。で19,800円。地味に高い。毛替えは1本6,600円。これはまだわかる。ニスのレタッチは1箇所3,300円でこれが2箇所だから6,600円・・・。いや吉野家なら何杯牛丼が食べられたんだ・・・。

私の周りに「車を擦ったが自力で修理した」という人がいました。車庫に入れようとして、ドアの辺りを擦って塗装が剥がれてしまったとか。この人は大人しく修理に出せばいいものを、中途半端にケチってプラモデルかなにかの塗装スプレーを買って吹き付けました。
結果、そこだけ色が微妙に違ってしまい恥ずかしい車になったようです。たしかスズキのスイフトだったはず・・・。

しかしちょっとした修理で3,300円かかるのなら、自分もニスを自力で塗ればいいじゃないかと思ったのも事実でした。できるかどうかは別ですが。


肩当てでどうしてヴァイオリンに傷がつくのか

肩当てをヴァイオリンに装着する箇所というのはゴムが付いていて、擦れたくらいで傷がつくはずもありません。ただ何回も何回も擦っているとだんだんニスが剥がれ落ちてしまったのだろうという想像はつきます。

修理が完了した楽器を受け取りに行った時、お店のお姉さんは「肩当てのストッパー部分がやや狭い」ということを指摘してくれました。私は毎日この設定で使っているので何も感じていなかったのですが第三者から見ると当たり前ではなかったようですね。

「狭く使うと当然圧力がかかってしまうんのでニスが剥がれやすいですし、そもそも楽器を押さえつけることになってしまいます」。
そりゃそうよ。でもなんでそんな狭い設定にしてしまったのか、私はまったく思い出せませんでした。

仕方ないのでお店のお姉さんにおすすめの設定にしていただきました。そうすると着脱も楽だし、圧力が緩和されるので楽器も喜んでいることでしょう。

というわけで幅広になった肩当てを楽器ケースにしまおうとすると・・・。


入らんやんけ!!

私のケースの小物入れスペースは肩当てギリギリのサイズ。しかしストッパー部分を拡張したせいで1、2cmほどどうしてもはみ出てしまうのでした。これではケースを閉じることができません。

「あ、入らない」

そういう私のしょっぱい指摘を聞いてお姉さんは苦笑しながら「お手数ですが使うときだけ広げてください」という、そらそうよ的なアドバイスをしてくれました。

「・・・わかりました」

間抜けな会話としか言いようがないのですが、このお姉さん以外の人が私に対応していたら、肩当てのストッパーが狭すぎるということを教えてくれていたでしょうか。そうではなかったかもしれません。すると私は何度も何度もヴァイオリンの同じ箇所に傷をつくり、そのたびに修理代を払い続けていたことでしょう。いやはや、知らないって恐ろしいです。