ヴァイオリンを人前で演奏する機会は逃してはいけない・・・。これは自分に課した決まりごとです。

「無人の山中で木が倒れたら音はするか?」という禅問答があります。
そりゃ音はするでしょう。音というのは振動を伝える空気があればメリメリドサッとかいう音が山にこだまするはずです。でもこう書くと「SF映画で宇宙戦艦がレーザー水爆ミサイルを撃ったら音がするのは変だ。宇宙には空気なんかないんだ」とかいう謎のツッコミを入れてくる人がいるでしょう。あれは「お約束」というもので、本当の宇宙戦争ではありませんから考えるだけ無意味です。

さてこの禅問答の答えは「その音を聞く者は誰もいない。したがって音はしない」だそうです。

じゃあ毎日慢性的ネタ不足に悩まされながら無理矢理記事を書いている「友だちいない研究所」。「このブログは更新されているか?」という問いは、「誰も読んでないから更新が止まっている」になるんでしょうか。

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話は変わって、音楽というのも人に聴いてもらってこそ初めて音楽が意味をもちます。
だからこそ私はいわゆる発表会とか演奏会の機会があれば、「こりゃ本番まであまり時間がないぞ」「このままだと準備不足で大爆死するぞ」ということが分かっていても必ず舞台に立つようにしています。


舞台に立つ機会は逃してはいけない

「幸運の女神には前髪しかない」という言葉があります。チャンスは1度しか訪れないのだから絶対に掴み取れという意味です。
アマチュア時代のGLAY(まだJIROさんが加入する前の頃)は、函館から東京へ上京してきた当時せっかくライブを行ってもライブハウスにまったく客が入らず、時には文字通りお客さんがゼロの状態で演奏しなければならかったそうです。良くても10人という時代が続いたとか。
しかし彼らはそういう逆境のときにあっても必ず週2回の練習を続け、週1回はステージに立っていました。ドラムとベースが加入せず、臨時メンバーにすっぽかされてTAKUROさんがベースだったり、TERUさんがドラムだったこともあったとか。満身創痍の状態でもジタバタを続けた結果JIROさんが加入し4人体制となり、これがGLAYに弾みを与えて新宿ロフトなどの有名ライブハウスにも出演できるようになったとか。その後、YOSHIKIさんに市川のライブで認められデビューすることになったのはあまりにも有名な話です。

これこそ、チャンスを掴み取るためにはジタバタしなければならないという典型であり、GLAYは幸運の女神の前髪を見事にとらえたのでした。

こういうことを念頭に、1つの演奏会が何か別のことを引き起こすきっかけになるかもしれないとみなし、必ず演奏会には出るようにしています。

2022年7月8日、凶弾に斃れた安倍晋三氏も没後の出版となった回顧録で次のように述べています。
――06年9月の総裁選に初めて出馬し、麻生太郎外務大臣、谷垣禎一財務大臣と総裁の座を争いました。出馬を決断したのはいつ頃ですか。

出馬するかどうか結構迷ったのですが、幹事長も官房長官も経験し、次は総裁をと期待する声がある時に手を挙げなければ、政治の世界では「なんだその程度の男か、度胸がないな」と思われます。だから決断しました。報道各社の世論調査では、次の首相にふさわしい人として私に対する期待が高かったですし、引くわけにはいかない、と。そういう意味では勢いに任せるだけで、準備や心構えができていたとは言えなかったかもしれません。

(『安倍晋三回顧録』より)
総裁選がじつは見切り発車でのチャレンジだったようです。ただ「政治の世界では「なんだその程度の男か、度胸がないな」と思われます」というのは、ヴァイオリンなりピアノに置き換えてもうなずける話です。教師から「次の演奏会はどうだね」と尋ねられ、「やります!」と答える人と、「え~、でも私はまだまだで云々」と言う人、教師が熱心に指導したいと思うのは前者でしょうし、なにか演奏会などの機会があれば積極的に紹介したいとも思うでしょう。

それにしてもロックバンドであれ政治であれ、「えいやあ」とチャンスを掴み取ろうとしてジタバタしないと成功できないようですね。であればヴァイオリンもきっとそうなのでしょう。