「71年間ありがとうございました。」この言葉が表紙に書かれた、由緒あるクラシック音楽雑誌『レコード芸術』は2023年7月号をもって休刊となります。
雑誌という紙の媒体が斜陽産業であることは間違いなく、なおかつクラシック音楽というマイナーな趣味でジャニーズや乃木坂46のようにボリュームを狙えないジャンルであれば、しばらくして復刊しますという流れは期待しづらく、本当にこれが最終号だと見るしかないでしょう。

私自身も90年代~2000年代、古本屋でバックナンバーを買い求めたり、大学図書館でCD月評などを読んだりとずいぶん思い出深い雑誌でした(だったらもっと積極的に買ってやれよ)。
音楽之友社のHPにはこう書かれていました。
『レコード芸術』は今号を持ちまして休刊となります。これまでご愛読賜りまことにありがとうございました。今後、本誌が培ってきた財産をどのように活用していくべきか、音楽之友社として鋭意検討を重ねております。決まり次第、音楽之友社ウェブサイトなどで発表いたします。

私は今日(2023年6月20日)、「もうこの雑誌を買うこともないんだな」と思いながら電子版を買い求めました。というわけで感想を備忘録的に書き留めておきたいと思います。


『レコード芸術』2023年7月号(最終号)を読んでみた。余計なことに気づいた

まずソニーの広告が目に止まります。
「長い間、沢山のレコード、CD、映像作品をご紹介いただき、本当に有難うございます。」
これを読むと、ああそうか、今回が本当に最後なんだなという実感が湧いてきます。そしてページをめくると、
「レコード芸術よ、永遠なれ!」
いや今月号で終わりですから。

今回の特集その1は「はじまりの交響曲」。ベートーヴェンやモーツァルトらの記念すべき交響曲第1番を分析し、その個性に迫ります。
特集その2は「『レコ芸』で出会ったこの一枚――とっておきの愛聴盤」。この雑誌のレギュラー執筆陣が自分たちの「推し」を紹介していきます。コルボだったり、庄司紗矢香だったり、クナッパーツブッシュだったり、アーノンクールだったり・・・。
かつては『クラシック名盤バトル』などのイロモノ的な書籍を出版していた鈴木淳史氏もいつの間にかこの雑誌に寄稿するようになり、この特集にも一文を寄せていました。が、案の定というかアーノンクールのモーツァルトを「推し」にしているあたり、鈴木氏らしさが光ります。

様々な「推し」を見ながら思うのは、21世紀になってからも様々な名盤の登場すること! 私のように学生時代にクラシックを好きになると、10代~20代のうちに、ベートーヴェンやシベリウス、チャイコフスキーやショパンといった有名どころは大体押さえてしまい、そうなってくるとバーンスタインやアバド、ワルターやハイフェッツ、グールド、グリュミオーといった20世紀後半のCDがコレクションの大半を占めるようになり、新録音にはなかなか手が伸びなくなります(同曲異演CDが増えすぎて、とても保管しきれない)。

そしてこれは「そういうもの」と受け止めざるを得ないのか・・・。執筆陣はやけに男性が多いですね。まるで昔のオーケストラのようです(80年代のN響の演奏をNHKオンデマンドで視聴できますが、男性団員だらけです)。オーディオ評論とか音楽学とか音楽評論の道を志す人は男性オンリーなのでしょうか? それとも女性が敬遠しそうな職業なのでしょうか? 私が就職活動をしていると、たとえば某ガス会社の採用案内には「女性社員もたくさん採用したいのですが、そもそも弊社はエントリーの段階で圧倒的に男子学生が多いんです」というようなことが書かれていました。それと同じようにクラシックのCDをせっせと買い込んで「フルトヴェングラーかカラヤンか」みたいなことを言うのって男だけなんでしょうか。そういえば女性で「ヴァントのブルックナーがすごい!」とか言っている人を見かけたことがありません。

ちゃんと誌面を読めば、『レコード芸術』に寄稿しているのは吉田秀和氏を筆頭に男性が多いというのはすぐにわかったはずなのに、私はなぜ今までそんなことに気づかなかったのでしょうか。

ともあれ私は『レコード芸術』最終号をすべて読んだわけではないので、引き続き内容をチェックしていきたいと思います。