NHKドラマからついに映画化された岸辺露伴シリーズ。劇場版のタイトルは『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』では、ルーヴル美術館の関係者があることをする場面が描かれていました。これってどれくらい難しいのでしょうか?
(以下、若干ネタバレが含まれますのでご注意ください。)



贋作ってどれくらい儲かるの?

作中ではフェルメールの絵画を精密に模写することで本物だと偽り、肝心のフェルメールのオリジナルは横流ししてしまう様子が描かれていました。何しろフェルメールは生涯に35点しか作品を残しておらず、どれもクオリティが高いのでオークションにかければ10億円を越える価格になることは間違いなし。日本のサラリーマンの生涯賃金が3億円弱くらいですから、私が3度生まれ変わって働きまくってもまだフェルメールの絵画を自分のものにすることは不可能です。これが凡人と大芸術家の差でしょうか。

2022年10月にはNHKで「贋作の誘惑」という番組が放送されていました。
高価な美術品が飛び交う華やかなアートシーンの裏であふれる贋作。贋作を暴こうとする最新の鑑定テクノロジーと、さまざまなテクニックを駆使して鑑定を欺こうとする贋作者たちの終わりなき戦い。その最前線をヨーロッパに追う。世界を揺るがす巨大贋作事件の当事者や、伝説の贋作師にも独占取材を敢行!

この伝説の贋作師とはウォルフガング・ベルトラッキ氏のことを指します。
CNN記事にはこう書かれています。
ドイツのベルトラッキ夫妻は、数十年にわたって贋作(がんさく)を描き、証拠を改ざんし、念入りに証拠を隠ぺいしてきたが、たった一つの不注意な行動により、彼らの偽造が明るみに出た。

夫のウォルフガング・ベルトラッキ氏は、絵画の偽造用の白色の絵の具に使用する亜鉛を切らしたため、代用品としてオランダのメーカーから亜鉛顔料を購入した。しかし、そのメーカーはその顔料にチタンが含まれていることを開示していなかった。

翌年、ウォルフガング氏が描いた贋作のひとつがオークションにかけられ、280万ユーロ(現在のレートで約4億円)という記録的な高額で落札された。「Red Picture with Horses」と題されたこの絵は、表現派の画家ハインリヒ・カンペンドンクの作品とされていた。

しかし、その後ある矛盾が浮上した。この絵を分析した結果、微量のチタンが検出されたのだ。

(https://www.cnn.co.jp/style/arts/35201471.htmlより)

うへっ。そんなに儲かるのか。自分でイチから作品を生み出すよりも、有名どころの作風を完コピして「取り壊し中の教会の地下から発見されました」みたいに言ってオークションに出すほうが手っ取り早く大金持ちになれるじゃありませんか。

もちろんそんなに簡単にできるものではなく、どんなに注意を払っても上記記事のように些細なミスから化けの皮が剥がれてしまうこともあるようです。

でももしかしたら、私たちが本物だと思って見ていた美術館の絵画とか彫刻も、ひょっとしたら贋作だだったり、鑑定ミスで別人の作品だったりするかもしれませんね。たまにあるじゃありませんか、中古車のメーター改ざんとか・・・。ビール飲み放題って聞いてたのに、飲んだ瞬間に発泡酒だと気づいてしまったとか・・・。私はヴァイオリンを弾きますが、オールドヴァイオリンの売買の世界でもラベルの貼り替えや鑑定書のすり替えなんてのがわりと当たり前に起こっています(昔、東京芸術大学でそういう事件があって逮捕者が出ました)。

でも『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』に出てきた、贋作の制作にはげむ男、なんだか動機は大金持ちになりたいみたいなところから出ていない気がしますけどね・・・。あんな暗いところで延々と作業するなんて、単にお金目当てならそこまでできないと思います。それにしてもまたルーヴルに行きたくなりました。なにしろ規模が大きすぎて、1、2回ではとりあえず回ったという既成事実が一応できるレベルなのですから・・・。



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