NHKドラマで好評だった岸辺露伴シリーズがついに劇場版公開。なんとルーヴル美術館に取材に行くというお話です。不吉な絵画の足跡を辿ってこの美の殿堂にやってきた露伴先生を襲う怪奇とは・・・?
(以下、作品のネタバレが若干含まれますのでご注意ください)


フェルメールとアレの相性とは

ルーヴル美術館。ここはもともと美術館のための建築物ではありませんでした。建物の外観からわかるように、ここは本来は宮殿として用いられていました。フランス革命は1789年であり、その4年後の1793年にこの宮殿で美術品を展示するようになり今に至ります。

しかし作品点数が膨大なので、展示しきれない作品をしまっておく倉庫はルーヴル美術館の悩みのタネでした。『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』でも言及されていたように、セーヌ川のほとりに建設されているので水害から作品を守るのは永遠の課題でもありました。とくに2016年にセーヌ川が洪水を起こすと、短時間のうちに作品を移動させなければならず大変だったようです。

2019年からは、パリから200kmも離れた場所に大型倉庫が稼働しておりこちらに多くの作品が運び込まれ、併せて修復士や研究者たちも受け入れているという、単に倉庫というにとどまらず学術施設と言っても過言ではないでしょう。

パリのオペラ座の地下には何があるのか? そうした想像から『オペラ座の怪人』が生まれたように、『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』でも誰も立ち寄ることのない忘れられた倉庫の一角で絵画の贋作を作成して本物とすり替え、肝心の本物は横流ししてしまうという犯罪が描かれていました。

横流ししていたのは、なんとフェルメールの作品でした。


フェルメールは横流しにピッタリ?

フェルメールといえば「牛乳を注ぐ女」や「真珠の耳飾りの少女」などで知られる17世紀オランダの画家です。実際には画商と鑑定業で生計を立てていたのですが、今では完璧主義とも言えるクオリティの絵画の作者として知られています。
このフェルメールは絵画のリアリティを極めた天才ではありますが、生涯にたったの35点、それもほとんど小品しか残していません。

天才+わずかな作品という条件が重なると、オークション落札価格がとんでもないことになるのは想像がつきますね。2014年にはロンドンのクリスティーズで10億円を越える価格が付いています。しかもこれはごく初期の作品でした。もし円熟期の作品が出品されたら・・・、2倍、3倍の価格になることは明らかでしょう。

さらに「小さい」という条件が重なってしまうと、「盗まれやすい」ということになります。「真珠の耳飾りの少女」のサイズは44cm x 39cmですから17インチモニターとさほど変わらない大きさです。こりゃカバンにこっそり入れて運び出して、どこかに隠しておくことだってできます。

というわけでフェルメールの作品はたびたび盗難に遭っています。とくに有名な事件は1990年にボストンで発生したもの。この時はフェルメールの「合奏」を含む13点の絵画が盗まれ、2023年現在今なおすべての作品が消息不明です。

このようにフェルメールの絵画は、その美しさだけではなく経済的価値や持ち運びやすさ、隠しやすさといった観点から犯罪者に目を付けられやすく、『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』で横流しの話が出てきたときも「ああ確かにな」という気分になりました。

どんなに厳重に警備しているつもりであっても一般人が立ち入り可能なのが美術館。美術品と盗難事件は切っても切り離せない関係のようです。


関連記事: