数学の問題を解いていると、「この公式を使えばラクになる」という解法に気づくことがあります。

・・・なんて、無理ですよね。普通の人は自ら気づくことなどありません。先生から「これはチェバの定理を使ってどうのこうの」と教わったり、問題集の解説ページにそう書いてあったりして身につけていく人がほとんどでしょう。
ということは、そういう指導をしてくれる先生に巡り合わなかったり、かゆいところに手が届く解説が書いてある問題集を買わなかったりすると一生知らないままだということです。

えてしてこういうのって都会の人のほうがいろいろな意味で情報へのアクセスでは有利で、本人の意志とは無関係に地方都市に生まれたりすると(その自覚なく)余計に苦労したり回り道をする羽目になります。

ヴァイオリンもその一つ。そもそも地方都市ではヴァイオリンを習っている人がおらず、ゆえにヴァイオリン教室もビジネスとして成り立たないので開設されておらず、親も「うちの子にヴァイオリンをやらせよう」というひらめきなど生まれるはずもなく、となると仮に素質があったとしてもヴァイオリンと縁のない人生を送ることになるわけです。まあ、あんな理不尽な楽器とは縁がないほうが幸せかもしれませんね。

私が何も気づかず弾いていた上昇音階の弾き方のコツも「教わって初めてわかった」というもの。
センスのある人ならすぐに気づくのに、普通に弾いていただけの私は本当に適性がないんですね・・・。そのコツとは・・・。


ヴァイオリン曲の上昇音階を弾く時のコツ

具体的な譜例を見てみましょう。

ballet

これはヴァイオリンを習う人なら大抵出くわすベリオの「バレエの情景」の序盤の一部(この部分はイ長調)。

普通に考えて、ラードミはG線、ラドミはA線、ラドミでまたE線に上がり、さらにラーと伸ばす部分はE線の上のほうへ小指をエイっと伸ばすでしょう。

ダメでした。そういう弾き方をしたら先生に全否定されました。

正しくはラードミでG線、ラドミもA線(ここまでは間違っていない)、その後のラドミもまたA線で弾きます。つまりこのラドミのラは3rdポジションでE線を1の指で押さえるのではなく、A線の7thまで上がって1の指でラを押さえろ、ドは3の指、ミは4の指を伸ばして、そのあとフラジオレットでラもまた引き続きA線で音を出せと指導されました。

私は普通に「ラドミのラは3rdポジションでE線を1の指で押さえればいいや」と思っていましたが、世の中のヴァイオリニストというのはこういう音階を見るとA線でそのまま駆け上がってフラジオレットでもっと高い音を出すのだとか。で、それがサマになるように何回も何回も音階を練習するのだとか。

少なくとも私はこの箇所を見て「あ、ここはこういう風に演奏しなきゃいけないんだ」と自ら気づくことはありませんでした。先生に言われて初めて「ああそうかな」という気分になりました。
ということはこれからも似たような音の連なりを見た時に、この時のことをすっかり忘れて普通に演奏して、その都度「ここは同じ弦で一気に弾くんだ」と言われるのだろうという未来の光景がいかにも想像されます。

どうやら私はヴァイオリニストとしての適正がさあっぱり欠けているようですね。