ヴァイオリンを演奏するうえで松脂というのは必須のもの。ヴァイオリンを買い替えようと思って楽器店に行き、試奏しようとしてあらびっくり。差し出された弓には松脂が塗ってなくてガクっとなった方もいらっしゃることでしょう。

弓を買い足そうと思って楽器店に行き、試奏しようとしてまたびっくり。これまた差し出された弓に松脂が塗ってなくてまたガクっとなった方もいらっしゃることでしょう。どちらも私です。

いちいち言うまでもなく松脂というのは弓の毛がヴァイオリンの弦を擦るときにぜったい必要なのです。でも昔の人は「松脂を塗れば音が出るのだ!」なんてよく気が付きましたね。初めてナマコを食べた人と同じくらい偉いです。

その松脂ですが世の中にはたくさんのメーカーから「こんなにあるのか!」とびっくりするほどの種類が発売されています。
でも多くの人は「違いがようわからんわ。とりあえずこの一番安いやつにしたらええねん」とか思って1500円くらいのやつを選びがちではないでしょうか。私もその一人。昔近所のヤマハでそういう選び方をしました(その前は、初心者セットに付属しているわけのわからないノーブランドみたいなものを使っていました)。

というわけでピラストロの松脂「シュワルツ」を選んだあなたは私と同じ考えの持ち主ですね・・・。



そりゃまあ有名メーカーが作っているだけに十分松脂として機能します。これを買うのは間違いではありません(唯一絶対の正解なんてのもあるわけないが)。

でも私は別の松脂に乗り換えて気づきました。この「シュワルツ」、わりと粉が飛び散りがちなのです。
そもそも松脂の乗り換えなんてあるんでしょうか? 一回買ってしまえば何年だって使えます。消しゴムみたいに簡単にチビていかないのが松脂。アマチュアの練習量なら10年は持つでしょう。

私の場合は、弓を買い替えたときに楽器店の担当者が「これはお土産です」と好意で差し出してくれたのが今使っている松脂で、「(あなたが今使っているシュワルツは)粉が飛び散りやすい」と教えてくれました。比べてみたら実際にそうだったのです。

私の弓はMonique Poullotという製作家が作ったフランス製の弓。夫のJacquesもまた弓職人。この夫が作った松脂(日本では3,000円くらいで入手可能なようです)は粉がなるべく飛び散らないように工夫を凝らしているらしく(詳細は私には分かりませんが)、あのときの親切な店員さんに感謝をしつつ毎日のごとくこちらの松脂を使っていて、あるときたまにシュワルツに戻ると「なんじゃこの粉は!?」と感じてしまうのです。

まあ、粉といってもスギ花粉のように体に悪影響があるわけでもなく、練習後に楽器をきちんと拭き取ればなんの問題もないはずです。それに松脂を変えたからといってそれで上達するわけではなく、本当にうまくなりたければ楽器店をウロウロする暇があれば音階とエチュードに向き合うべきでしょう。

とはいえ久しぶりに松脂を変えてみたら相当びっくりしたこともまた事実。もし時間とか財布に余裕があるなら、いつもと違った松脂を話の種になにか一つ買い求めてみるのも良いでしょう。繰り返しますが、それでうまくなるわけではありませんけれども・・・。