舞台というのは恐ろしいもの。魔物が潜んでいるといっても過言ではないでしょう。どれほど練習を重ねたとしても、本番当日の会場の雰囲気にのまれてしまい、実力の半分も発揮できなかった、といった話はよく耳にします。本番の魔力がどれだけその人に作用するかというのはまさにその人の性格によりけりであり、羽生結弦選手のように本番で大いに輝くタイプもいれば、高橋大輔選手のように本番で足がガクガクとなる人もいます。

音楽家もやはり千差万別であり、小澤征爾さんの師匠であり、チェリストそして指揮者でもあった齋藤秀雄氏は教育者としては戦後日本で抜きん出た業績を上げましたが、本番で緊張しやすい性格だったらしく、舞台では思うように体が動かなかったようです。その他、ヴァイオリニストではハイフェッツもああ見えて実は緊張しやすいタイプだったとか(本当か?)。グリュミオーもあの優麗な音からは想像もつかないものの大変な心配性で、弦をやたらと張り替えたり細かなパーツを何度も職人さんに調整させていたとか。要するに面倒な性格だったようです。

ピアノやヴァイオリンを弾くときに、緊張というのは大変な難敵であり、自宅で練習しているとどうでもいい箇所で、足が震えたせいでペダルをうまく踏めなかったり弓がふらついて珍妙な音になったりします。それがコンクールという真剣勝負の場であったら取り返しがつきません。

しかし私はあるとき、たとえ日本音楽コンクール本選であっても緊張しない方法に気づいてしまったのです。


コンクール本選ですら緊張しない方法。これぞ裏技

たぶんこんな裏技に気づき、かつ世界に向けて情報発信しているのはこのブログだけ。
そもそも緊張というのは、最初の3分がピークで、そのあとストンと落ちていきます。
私は今でこそプレゼンのコンサルタントをしていますが、子どものころから極度のあがり症でした。しかしあるとき緊張を生かし、感動を伝えるには「コツ」があることを発見し、人生が好転し始めたのです。

そのコツとは最初の3分を攻略すること。

「手が震える、足が震える、声が震える」という極度の緊張は永遠には続きません。最初の3分がピークです。最初の3分を成功させれば、その後も気持ちが切れずに維持できます。緊張する人は「最初の3分間は、魔の時間」と覚えておいてください。この3分間を乗り切れば、どんな人でもプレゼンを乗り切ることができるのです。

(東洋経済オンライン記事、永井千佳氏「人前で緊張する人が「最初の3分」にすべきこと」より)
プレゼンのコンサルタントもこのように書いています。「3分」というのは私の経験則から言ってもピッタリと当てはまります。つまり舞台に上がって最初の3分を乗り切ればOK。

さて、ここで日本音楽コンクールの参加規定を読んでみましょう。

参加者心得

予選・本選に関する心得
(イ) 出場者は、指定の日時に会場で受け付けを済ませて控室に入り、係員の指示に従ってください。遅刻の場合は、棄権とみなすことがあります。
(ロ) 伴奏者は、参加者自身が委嘱、同伴してください。
(ハ)進行の支障となるため、棄権を決めた場合はすみやかに事務局(コンクール開催中は会場内事務局)に連絡してください。


著作権に関する心得
(イ)著作権法に抵触する場合は失格となります。抵触の内容については、主催者側が判断します。
(ロ)作曲部門受賞作品の著作権は作曲者に帰属しますが、受賞決定の日から翌年3月までは主催者が留保します。その間に受賞作品を演奏または録音する場合は、主催者の了解を得てください。
(ハ)作曲部門において、応募作品の返却を希望する場合は、放送のための収録終了後に返却します。返却に要する送料は、本人負担(着払い)となります。


入賞者再応募規定
演奏部門で入賞した者が同部門に再び応募する場合は、その部門の第1予選を経ずに第2予選から審査を受けられます。受賞者は、参加申し込みの該当欄に記入してください。声楽部門については、歌曲の入賞者は歌曲の年に、オペラ・アリアの入賞者はオペラ・アリアの年に、それぞれ再応募として受け付けます。

※参加者の個人情報は、報道、コンクール運営、出演依頼、音楽情報等のお知らせ以外の目的に利用することはありません
まあこんなことがずらずらと書き連ねています。が、たとえば大学入試の出願要項に比べるとずいぶんと緩いな、という印象を受けます。大学入試の場合、「選挙のアナウンス、物売り、動物の鳴き声、風や雨の音がうるさいといった苦情は受け付けません」「〇〇の場合は不正行為と認定し、すべての試験科目を無効とし、その後の受験をお断りします」「学校保健法で出席停止が定められている感染症(インフルエンザ等)に罹患し、治癒していない場合、受験をお断りします。また、検定料は返還いたしません」とか、お前は鉄壁かというくらいクレーム対策を施しているんです・・・。

というわけで日本最高峰のコンクールである日本音楽コンクールでも決まりごとが「ザル」であり、要するに主催者は「出願者がそんなことするわけないだろ」というスタンスなのでしょう。現にそういう出願者ばかりなんでしょうね。

私はこの規定を読んだとき、「舞台の下手から登場して、ステージ中央にたどり着くまでの時間制限について一切触れてないぞ」と気づきました。つまり最初の3分をなんとかしのぐために牛歩戦術を使っても、少なくとも失格にはならないということです。

え、牛歩戦術を知らない? コトバンクによると、牛歩戦術とは
議事を妨害する目的で採決に長時間を費やさせる議会戦術。記名投票にあたり,呼名された議員が牛の歩みのようにゆっくりと時間をかけて投票箱まで進み投票を行うため,この名がついた。議事日程をできるかぎり遅らせ,時間切れで廃案を目指す目的で用いられる。投票に制限時間が特別に設けられていない日本では,少数野党の有効な抵抗手段として多用され,投票だけに8時間以上かかった事例もある。
アメリカでも似たような「フィリバスター」というものがあり、「いかなる上院議員も、他の議員の討論を、その議員の同意無しには中断させることができない」という決まりになっているため、原則的に議員の発言時間が無制限となっています。したがって、長時間にわたり討論を続けることで議事進行を意図的に遅延させることが可能なのです。

おわかりでしょうか。つまりわざと足踏みをするかのごとくゆっくり歩くことで(露骨に牛歩戦術だと国会のマネだとバレるのでぎっくり腰で歩きづらいフリをするとか?)3分を稼ぎ、緊張の波をやり過ごそうという作戦です。これって良くないですか? だれかチャレンジしないでしょうかね・・・。私、とっくにコンクール参加可能年齢をオーバーしているのでそもそもチャレンジもへったくれもないんですよね・・・。




注:本記事はバカ記事です。