ヴァイオリンを弾く人なら、たぶん始めてわりと初期の段階でチューニングに一苦労した経験があるでしょう。なにしろヴァイオリンのペグが扱いづらいこと、扱いづらいこと・・・。ギターと比べると明らかに回しづらくできており、しかもちょっとずれただけで音程が露骨に狂います。イラッとします。チューナーがあればまだマシですが、チューナーもなく、自分に音感もなにもなく、ピアノも何もないとかいう状態ですと、一度狂うとそれで終わり。今でこそスマホアプリでチューナーは無料でダウンロードできますが、私がヴァイオリンを始めた当時はスマホなんていうものは影も形もない時代でした。
そんな私がチューニングしようものなら、E弦をブチッと切ってしまい青ざめる。で、イオンモールの楽器屋に自転車で慌てて行って弦を買ってくるもその値段の高さに驚きます。子供の小遣いでどうにかなるっていうレベルじゃありませんん。とんでもない無謀なことを始めてしまったと知ってもそれこそ後の祭り。でもこれはまだまだヴァイオリンを学び始めて経験するたくさんの理不尽の、たったひとつに過ぎませんでした・・・。
(ちなみに戦時中はヴァイオリンの弦もちょっとやそっとでは入手できないので、消耗してくると裏返しにしてもう一度張っていたそうです。)
ヴァイオリンの弦は一体どれが最強なのか
「最強」だなんていうとなんだか天下一武道会みたいな言い方ですが、一応エヴァ・ピラッツィがとくにソロ向きだと言われています。ただ他方で「ヘタリが早い」(某楽器店副店長から直接聞きました)という欠点も抱えています。なんだか短距離走はメチャクチャ早いのに長距離走だとすごく遅い奴みたいですね。
そしてエヴァ・ピラッツィは「高い」という致命的弱点があります。4本で1万円を超える価格。
このヒモみたいなやつに1万を出すとかいう感覚は普通の人には理解されないでしょう。焼肉を食べに行ったほうが満足度は高いんじゃないでしょうか?
一応、定評があるのがオーストリアのトマスティックから発売されているナイロン弦ドミナントで、私が色々ヴァイオリン関連の本を読んだ限りでは千住真理子さんや篠崎史紀さんも使っているようです。まあプロが使っているということであれば、アマチュアが使ってもなおさら問題ないでしょう。
日本のヴァイオリンディーラーのなかで最も有名な方であろう、神田侑晃さんの著作『ヴァイオリンの見方・選び方 応用編』によると、「弦の性能と値段は関係ない」。値段の違いは、技術料というよりは、材料費の高低に比例しているとか。そして、弦は消耗品であるため、値段、持ちの良さ、性能の持続性、歩止まり(良品:不良品の割合)を考慮すべきと述べられていました。
・・・しかし、ヴァイオリンの弦ってそんなに真剣に選ばなければいけないものなんでしょうか。
なんだかサラリーマンの腕時計とかネクタイとあまり変わらないんじゃないかという気がするのは私だけでしょうか。腕時計がSEIKOだろうがCITIZENだろうが、12時は12時ですし1時は1時。遅刻をするのはあなたが悪いのであって腕時計のせいではありません。おしゃれなネクタイをしたからといってあなたのパフォーマンスが上がるわけではなく、ドン・キホーテで900円で売っていたネクタイだからといってあなたが仕事をミスするわけではありません。
同様に、ドミナントだろうがエヴァ・ピラッツィだろうが、音階が弾けない人は何をやってもダメですし、重音奏法をきちんと本番で綺麗に響かせるためには10年は真剣に取り組まないと無理でしょう。
・・・ってここまで書くとこの記事の存在意義もなくなっちゃいますね・・・。要するにドミナントでもヘリコアでもなんでもいいからせめて音階をまともに弾けってことですね・・・。
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