2023年1月21日(土)、ティアラこうとうにて行われた東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団の第71回ティアラこうとう定期演奏会でソリストとして起用されたのがヴァイオリニストの荒井里桜さん。

とある人の紹介で彼女の演奏会のチケットを頂いたのが・・・、5年ほど前だったでしょうか。
それ以来、荒井里桜さんの弾くブラームスだったり、チャイコフスキーだったりを時折聴くようになりました。今回はシベリウス。たしか3年ほど前にも同じ曲を聴きに行く・・・、はずが新型コロナウイルス感染症の影響でコンサートを含む様々な催しが中止になったのを覚えています。

最後に荒井里桜さんの演奏会に出かけたのが2021年9月、サントリーホールでのブラームスでしたのでかなり時間が経過しています。さて今回はどのような演奏だったのか・・・。


精緻で楚々とした音色が聴きものだったシベリウス

話が突然脱線して恐縮ながら、以前私はヒラリー・ハーンが演奏するシベリウスの『ヴァイオリン協奏曲』を聴いたことがあります。このときは第3楽章がオーケストラの大音量に負けず、すべての音が光線銃のように1階席後方にまで刺さってきたことを今もはっきりと覚えています。なんだこりゃ、「とびだすえほん」か!? 一体どう弾けばああいう音が出るのか・・・。

荒井里桜さんの演奏は、私が覚えているとおり一音一音を精緻に連ねていくというスタイル。恣意的なところは見当たらず(クラシックはいわば伝統芸能なのでむしろそれが当然なのだが)、丁寧な音の積み重ねの総体として立派な織物ができていました、というもの。今回のシベリウスでもその路線であり、これは予想どおり。

必要以上に深刻ぶるでもなく、余計な表情をつけるわけでもなく、しかし結果として楚々としたたたずまいになっているのは、上質な甲州ワイン(人によってはニュージーランドだ、と受け止める方もいらっしゃるかも)の味わいを思わせるものがあります。

私が覚えている限り、彼女はグァダニーニを使っていたはずです。しかし今回会場で配布されていたプログラムによると現在はプレッセンダを使っている模様。楽器を変えたことがどこまで演奏スタイルに作用したのかは分かりませんが、白ワイン、というか水彩画風の音の連なりに浸っていられるのは貴重な機会としか言いようがありません。これ以上何かを求めるとしたら、例えばワインで言うところの長期熟成の結果として現れてくる「香り」でしょうか。ただそれは一朝一夕に獲得できるものではなく、やはり時間をかけることが必須のものです。

荒井里桜さんは今後も経験を重ね、表現者として様々な音を私たちに届けてくれることが期待されるヴァイオリニストの一人であることは間違いないでしょう。個人的にはブラームスの『ヴァイオリン・ソナタ』の実演にいつか接することができたらと考えています(以前樫本大進さんがこれを演奏するのを聴いたことがありますが、霧の向こうから音が立ち上ってくるような繊細な表現で驚きました)。これからも彼女の演奏会には注目していきたいと強く思いました。