毎年1月になると成人式が各自治体で開催されます。私は地元が岡山でしたが、大学進学をきっかけに上京し、成人式の翌日が試験だったので(というか地元に友だちもいなくて参加する意義を感じなかったので)、欠席しました。よくわからない式典のために往復3万払って4時間かけて新幹線で帰省するなんて、私にしてみれば異次元の発想です。
それとは対照的に、やたらと本気を出して準備するいわゆる陽キャもいます。
女性が振袖をレンタルして写真撮影にこだわるのはまだわかります。女性はそういうものです。ただみんな揃いも揃って同じような振袖を着ているのでもう誰が誰だかわかりません。大学の卒業式もみんな袴を着ていてやはり同じ姿。お前らクローン人間か。
ともかく陽キャはなぜあんなに張り切るのでしょうか。
私はこの疑問に答える新説を耳にしました。
「俺はいまこんなに稼いでるんだと見せつけるため」「俺はいまこんなに輝いてるんだと見せつけるため」、だそうです。この説を聞いた瞬間クラクラとなりました。
成人式でイキって何になる
「俺はいまこんなに稼いでるんだと見せつけるため」。つまり中学や高校を卒業して、そのあと大学には進学せずに就職した人は、そりゃ経済的にゆとりがあるでしょう。結局は生涯賃金で大卒にかなわず、大卒の総合職の指示を受ける立場であっても大学に進学した同級生よりは、「その時点では」お金を持っています。だからやたらと高いクルマで乗り付けてきたり、飲み会で「自分がいかに稼いでいるか」を語ってきたり・・・。ただのマウンティングでしかないんですけどね。
え、どんなクルマかって? こんなやつでしょうどうせ。
この世には2つに1つしかない。
圧倒する側か、それとも、圧倒される側か。
VELLFIRE or NOT あなたは、どちらか。
これは実在するクルマのキャッチコピーです。私は見た瞬間気分が悪くなりました。でもマウントを取るにはピッタリです。私ならマーチとかミラココアとかで十分ですけどね。いやペーパードライバーだから運転できませんけど。
「俺はいまこんなに輝いてるんだと見せつけるため」。輝いてるんだって、ラブライブ! でしょうか。とにかく「〇〇大学に進学して、いまこういうことをしていて、彼女ができてかくかくしかじか」。だからどうしたというのでしょうか。他人がこんなに充実していることを知ったからと言って私自身の生活に何一つ影響するわけではないので「そうなんですね~」で終わります。この充実マンもあと数年すれば世の中に数え切れないほどいるサラリーマンになってしまうことを誰か教えてあげてください。
結局のところ、「ワイは今こんなにすごいんやで」という姿を見せたくて仕方ないのでしょう。でも本当にすごい人であれば成年になる以前にオリンピックでメダルを獲得したり芥川賞を受賞したり芸能界デビューしてTVに出たりして、そもそも成人式なんかに出ている暇はないはずです。つまりどんぐりの背比べでしかありません。言い換えると、それだけそいつも含めてその集団の同質性が高く、同じようなことをしているのでちょっとしたことで差をつけようとして、みみっちい競争が起きる。そんなものに勝っても負けても面白くないでしょう。
成人式に出なかった私はその後、マンションが買えるくらいの資産を一応は形成することができました。上下左右に人がいっぱいいるコンクリートの空間を買うつもりはありませんが。うまく行けば50代で仕事を辞めることができるかもしれません(そんなにうまく行くわけないと思うが)。
それだけお金を貯めても、結局お金でどうにかなるものは値札が付いているものだけだということを知りました。何億円もするストラディヴァリウス(というヴァイオリンの銘器)を手にしたところで突然プロ奏者のようにうまく演奏できるはずもなく、石油王のように大金持ちになってもフルマラソン走り切るだけの体力とか根性が身につくわけでもなく、そういうのは結局のところ自分で努力して獲得する他に道はないのだ、と身にしみてわかりました。ただそれが生きている間にできるかどうか、またそれができたとして、他者に対してどのような意味があるのかは別問題です。
・・・という実感を得ると、ますます他者と比べ合ったり、競争したりすることが嫌になり、そもそもそういうことを思いついてしまう「ヒト」そのものがますます嫌いになっていくのでした。暗いですね。
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