ヴァイオリンを弾く人は毎日のごとく小野アンナとかセブシックとかカール・フレッシュなどと向き合わなくてはなりません。

ピアノやギターと違って、鳴らせば自動的にその音が出てくるわけではないのがヴァイオリンの厄介なところ。「シ」だと思って出していた音が実は微妙に高くて「ド」だったり、逆に低すぎて「フラットのシ」だったり、ということは当たり前のように発生します。それをレッスンで指摘されるとシ=死の宣告です。

子供の時にピアノを弾いていた(弾かされていた)という人なら音感が身についていたりするものですが、音楽経験ゼロからヴァイオリンに飛び込むと、想像もしなかったような難易度の高さに諦めて挫折するというのが黄金のワンパターンです。しかも初期費用はiPhone1台分はかかるという二重苦。これでヴァイオリンを続けるという人は、よほど「諦める力」がない人か、往生際が悪い人か、時間が無限ではないと知らない人か、クラシックに対して盲目的にありがたみを感じている人か、友だちがいなくてそれ以外にやることがない人でしょう。

とにかく音階練習が命なのがヴァイオリン。NHK交響楽団のコンサートマスター、篠崎史紀さんも音階の重要性を著作で強調しており、これ以外に上達の道があるなら逆に教えて欲しいとまで書き記しています。著作『絶対! うまくなるバイオリン100のコツ』からの引用は次の通りです。
音階練習以上に、基礎練習に適した方法はありません。それもただ弾き流すのではなく、ひとつひとつの音を確かめながら、ゆっくり弾くのがよいです。
私は、基礎練習は音階以外にはないと確信しています。
「無意識にできるようになるまで」身体の中に入れるべき基礎とは何でしょうか? それが音階練習です。
音階練習にはすべての手の形とパッセージが含まれているので、音階練習をやらなければすべてのパッセージが弾けません。逆に、音階練習をやればすべての曲が弾けるようになる、ということです。
音階練習をすることで、すべての手の形、バイオリンのポジションを身体の中に入れることができるのです。私は、音階ができなければバイオリンを弾くことはできない! と断言します。
このように、音階というのがヴァイオリン音楽の基本。

ただ重要であることと、「練習していて楽しい」のはまた別です。だからみんなやめていっちゃうんですよ・・・。


ヴァイオリンの音階練習がつまらないからといってやってはいけないことがある


次の画像は、国立(くにたち)音楽大学のある年の入試問題の一部です。

f2889d81

案の定、音階が出題されています。これで実力を推し量ろうという狙いでしょう。篠崎史紀さんのご発言の正しさが裏付けられたと言えます。

だから毎朝、ヴァイオリンの音階練習がつまらないからといってタブレット端末でYoutubeを立ち上げて「ラブライブ!サンシャイン!! Aqours浦の星女学院RADIO!!! 」とか「ラブライブ!スーパースター!! 結女放課後放送局リエラジ!」とか「秋元真夏(乃木坂46) 卒業アルバムに1人はいそうな人を探すラジオ サンデー 」とか「ベルク presents 日向坂46の余計な事までやりましょう」を流しながら変ホ長調とかヘ短調とかの音階を弾いてはいけません。だが俺はやる!

なぜこういう番組を流しながら弾いてはだめなのでしょうか。音階という苦痛が声優やアイドルの声によって緩和されるわけですから、挫折という最大のリスクを回避できていると言えるではありませんか。どうせ一人暮らしですから周りに誰もいません。ヲタバレする危険性もありません。

理由は簡単で、私の先生曰く「音階を弾くときは、楽器がきちんと鳴り響いていることを確かめながら音を出すことが大事である。とくに倍音が響いているかどうかを意識したほうがいい」。

私はこれを聞いた瞬間だめだこりゃと思いました。なぜって、私は賃貸物件に暮らしていて、契約書には「楽器は演奏するな」と書いてあります。だから思いっきりヴァイオリンを弾くなんて無理。仕方ないのでミュートという道具をはめ込んで音を3分の1くらいに減らしています。

「私みたいな人はどうなるんですか」と先生に聞いてみましたが、「まあ思いっきり弾くのが難しければ数分くらいは」みたいな回答でした。これで倍音を意識するなんて、悪いのは自分のせいじゃなくて東京の居住環境だろうと責任転嫁もしたくなります。そして、人間は環境には勝てないんですよね・・・。

とにかく今の私が音階を練習したところで思ったような成果が上がらないということはなんとなくわかりました。よって私はこれからも「ラブライブ!サンシャイン!! Aqours浦の星女学院RADIO!!! 」を聴きまくってよいのである。