確かな根拠がないときに、「ざっくりとこんなもんだろう」という推定値にさらに「この条件ならこれくらいの数字」を掛け算していくことで、「シカゴにピアノの調律師は何人いるか」とか「埼玉県にマンホールはいくつあるか」といった推計値を求める計算方法を「フェルミ推定」といいます。

このフェルミ推定を使いこなせるかどうかというのは、コンサルティングファームの採用試験などでもよく出題されると聞いたことがあります。

このフェルミ推定と関連が深いのがドレイク方程式というもので、銀河系に存在し、かつ、人類とコンタクトする可能性のある地球外文明の数を推測するというもの。

このドレイク方程式を応用してロンドンの大学院生が自分に彼女ができる確率を計算したとか。

ロンドン在住の女性である(400万人) 


24~34歳である(20%→80万人)


独身である(50%→40万人)


大卒である(26%→10万4千人)


魅力的である(5%→5200人)


自分を魅力的だと思ってくれる(5%→260人)

こんな風に計算を繰り返していくと、ロンドンで一晩遊びに出たとして、彼の要件に合致する女性で、かつ相手も自分に興味を持ってくれる女性と出会う確率は0.0000034%と導き出されました。
実質0%・・・。

ただしこの話にはオチ(?)があり、この大学院生には付き合って6ヶ月になる彼女がいるとか。おい。

つまり「計算してみた」というのはあくまでも「その人が立てた理論に基づいて計算してみた」のであって、現実とは乖離があるのが普通です。もし本当にここまで女性とのめぐり逢いの可能性が低いのであれば、世の中は独身者ばかりで溢れかえるはずです。しかし実際問題、あなたの周りで「この1年、一切誰かが結婚したという話を聞いてない」ということはないでしょう。

上記の計算はまだ「彼女ができるかどうか計算してみたら、絶望的だった」という笑い話に過ぎません。
しかしつい最近にも
新型コロナウイルスについて、厚生労働省のクラスター対策班に参加する北海道大学の西浦博教授(理論疫学)は15日、不要不急の外出自粛などの行動制限をまったくとらなかった場合は、流行収束までに国内で約42万人が感染によって死亡するとの見方を示した。現在、緊急事態宣言が出ている地域などを中心にとられている行動制限によって、どの程度死者数を減らせるか試算中という。

(https://www.asahi.com/articles/ASN4H3J87N4HULBJ003.htmlより)
という「計算結果」がありました。私は「おかしいな。東京大空襲の死者が10万人、広島と長崎に投下された原爆の死者が20万人、沖縄戦の死者も20万人。これを上回る死者?」と違和感しかありませんでした。


このときの「騒ぎすぎだ」という違和感は2020年4月に
という記事を公開し、
今回の件が収まってから、政府も専門家(と称する人)も、マスコミも、そして私たち一人ひとりもここ数か月の間に自分がやったことは適切だったのか、冷静さを欠いていなかったかを十分に振り返るべきだと思います。
と締めくくりました。

上記の試算は「不要不急の外出自粛などの行動制限をまったくとらなかった場合は」がミソ。まったく対策がなされないということはありえず、現実にはそのような大量死は起こりませんでした。
「いや、緊急事態宣言があったからこれが回避できたのだ」という考えもあるかもしれませんが、「緊急事態宣言が出なかった」という時間軸が存在せず、比較が不可能である以上「夫が今年健康でいられたのは100万円の壺があったから」という霊感商法のセールストークとさほど遠いところにあるわけではないでしょう。つまりは「42万人が」というのは机上の空論だったということです。

世の中にはこのようにいろいろな計算というものが溢れかえっていますが、現実社会ではそのまま計算どおりにいくことがないと考えていたほうがいいでしょう。

え、計算したことがすべてだ? いえいえ、そんなことを言っていると「理屈倒れのシュターデン」ってあだ名がついちゃいますよ・・・。


追記:世の中、こんな診断もあったのか! 曰く、「恋愛における自分の行動の癖や考え方の癖を分析・理解することのできるテスト」「Web上で20の設問に答えるだけ!」「たったの3分で入力完了!」「完全無料!」、云々。診断を名乗るからには科学的なんでしょうねきっと。変に自分で計算式を組み立てるよりもまだ信頼性がある・・・!?