このブログは「友だちいない研究所」といいます。
管理人である私には友だちがいません。学生時代は「グループワークをやれ」と言われても友だちがいないので1人グループを結成して1人で発表していました。
社会人になっても友だちがまったくいません。
職場でもいつも1人で、昼食のときは1人で空き部屋でNHKのドキュメンタリー「映像の世紀」とか「なぜ日本人は戦争を止められなかったのか」とかいう番組をタブレット端末で視聴したり、ホロコーストがどうしたとかハンセン病患者に対する差別がどうしたとかいう本を読んでいます。暗いですね・・・。
そんな私が今読んでいる本が芝健介著『ホロコースト ナチスによるユダヤ人大量殺戮の全貌』(中公新書)。ヒトラーもナチスも最初からユダヤ人をガス室で絶滅させようという構想を持っていたわけではなく、最初のころは追放政策を採用していました。ところが独ソ戦が始まると東欧の占領地域で大量射殺が行われるようになり、これが殺戮の実行部隊に対する大きな負担であることがわかると「ガス室を建設して殺してしまおう」という「解決策」が浮上します。
トレブリンカとかアウシュビッツといった絶滅収容所はこうして運用されるようになっていきました。
こうした一連のユダヤ人迫害の流れのなかでひときわ名高いのが「水晶の夜」。
ナチス=ドイツ時代の1938年11月9日~11日にドイツ全土でナチ党の指令で都市のユダヤ人の居住区ゲットーが襲撃され、破壊されたユダヤ人排斥事件。襲撃されたユダヤ人商店のガラスが散乱した様子から「水晶の夜」と言われた。襲撃の口実は、7日にユダヤ人青年によってパリのドイツ大使館員が銃撃され負傷したことであった。ナチス=ドイツのヒトラー政権は、すでに1935年9月にニュルンベルク法を制定し、ドイツ人の人種的優位と同時にユダヤ人を劣等民族と規定し、人種差別を合法化しており、その具体的な行使のチャンスを狙っていた。この事件によって国民の反ユダヤ人感情を刺激して支持を得るためと、政権の強権支配を印象づけるために、ヒトラーとゲッベルスの指令で行われた。(https://www.y-history.net/appendix/wh1504-082_2.htmlより)
「ユダヤ人青年によってパリのドイツ大使館員が銃撃され負傷した」、その動機は、ドイツ在住のユダヤ系ポーランド人を追放しようという非人道的政策への抗議でした。ナチスはこれを差別のきっかけとして悪利用したわけです。
前述の『ホロコースト ナチスによるユダヤ人大量殺戮の全貌』によると、死亡91名、重傷者・自殺者32名、略奪店舗750件、破損窓ガラス数万件であり損害額は600万ライヒスマルク、器物損壊数百万ライヒスマルク、ユダヤ人への課徴金10億ライヒスマルクとされています。
このライヒスマルクというのを現代の日本円に換算してみるといくらでしょうか?
1938年 100マルク=40.3ドル=8.24ポンド=1397フラン=141円(昭和国勢総覧 東洋経済新報社 第2巻 10-21より計算)(http://web.sfc.keio.ac.jp/~gaou/cgi-bin/mondou/html/013531.htmlより)
という情報が見つかりました。URLから察するに慶應義塾大学の関係者が運営しているHPのようですから信ぴょう性はあるようです。
ここから換算してみると、1マルクが1.41円なので
破損窓ガラス600万ライヒスマルク=846万円。
器物損壊数百万ライヒスマルク=そもそも「数百万」が漠然としているので計算しません。
ユダヤ人への課徴金10億ライヒスマルク=14.1億円。
ウェブサイト「日本円貨幣価値計算機」で1円の価値を比較すると、
1938年(S13)の1円は、2019年(R1)の1,341円にあたります(1341倍)
したがって、846万円=今の日本円なら11,344,860,000円。111億3千万円!? ガラスってそんなに高いの?
もう一度『ホロコースト ナチスによるユダヤ人大量殺戮の全貌』を読むと、「600万ライヒスマルクはベルギーの当時の国民総生産の半額」とあるので納得。にしてもいったい何枚のガラスが割れたんだ・・・。
もう一つの「ユダヤ人への課徴金10億ライヒスマルク=14.1億円」は、今の日本円で1,890,810,000,000円に相当します。1.89兆円!! この課徴金は「パリのドイツ大使館員が銃撃され負傷した」ことへのペナルティをドイツ国内のユダヤ人の連帯責任とし、また国家財政の危機的状況を考慮しての請求でした。「水晶の夜」の損害の保険金支払はドイツの保険会社によってなされるはずでしたが、この埋め合わせをユダヤ人の財産差押によって行うというあくどいスキームでした。
それにしてもよくこんなことを思いつく人がいましたね。そして多くの人はこれに同調し、または知っていても見て見ぬふりを貫いたのです。
こういう本を読んでいると、私はますます人間が嫌いになっていくのでした。
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