フランソワーズ・サガンの長編小説『夏に抱かれて』はナチス占領下のフランスにおいて、レジスタンス活動をするジェロームとその愛人アリスが、シャルルという名の友人を自分たちの活動のために利用しようとすることろから物語は始まります。
シャルルが住むのは南東フランスのドーフィネ地方。ちょっと東に行けばイタリアですから、陽光が眩しく、パリと比べると明らかに南国です。
ずいぶんと明るいところにやってきた2人ですが、心のうちは暗いです。なにしろヒトラーのせいで自分たちの国がメチャクチャにされ、ユダヤ人たちは強制収容所へ送られて殺されているのですから・・・。
しかしジェロームもアリスもちょっと変な男のところに身を寄せてしまいましたね。
シャルルはとんでもない女好き。ジェロームもそのことをわかったうえで彼のところにやってくるなんて、ずいぶんと不用心です。ほかに仲間はいなかったのでしょうか。もしかして私と同じく友だちがいなかったのでしょうか。
案の定、小説の序盤ではアリスはジェロームとくっついています。しかし中盤になるとアリスはシャルルとともにパリへレジスタンス活動のために出かけていき、そこでシャルルと肉体関係を持ってしまいます。そりゃシャルルもあの手この手でアリスとの距離を縮めようとしているのですからまあそれも当然の結果ですね。
お前、シャルルとそういう関係になったのか? ジェロームはアリスを問い詰めます。
「テクニックなら、シャルルにお聞きなさい、ジェローム。知りたいのなら、言うけれど、たしかにシャルル・サンブラは火曜から木曜日にかけて、丸一日と二晩、私を満足させてくれたわ。たしかに私は囁き、呻き声をあげ、要求もし、命令もしました。言うことはそれだけです」
アリスはこう答えました。でもジェロームもシャルルが女と見るやすぐに飛びつくと知っていて彼のところにやって来たので身から出た錆です。
やがてジェロームは一人でシャルルとアリスのもとを離れます。そしてパリの近くでゲシュタポに逮捕され拷問を受けることになります。その直後ドイツ軍はヴィシー政権との協定を破ってフランス全土を占領してしまいます。
戦争に嫌悪感をシャルルもまた、レジスタンス活動に身を投じることになりました。
・・・というのがざっくりとした全体の流れです。
実際問題、男2人と女1人というわかりやすい構図があって、男の魅力に誘われて女があっちにいったりこっちにいったりというしょうもないもの。ナチスとか第二次世界大戦とかいうのはあくまでも「その時代にそういうことがあった」という舞台装置でしかなくて、ジェロームとアリス、シャルルという組み合わせであれば19世紀だろうが21世紀だろうが似たような関係になっていたはずです。
おそらくですがそういう人間関係のよろめきをこそサガンは書きたかったのでしょうね。
なんだ、レジスタンスとかユダヤ人とか書いてる割には、あんまりナチスって関係ないじゃないか!
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