ユダヤ人は頭がいい・・・。そういう話はよく耳にしますね。地球上の人類のうちユダヤ人が占める割合は0.2%。しかしこの少数民族からアインシュタインのように天才としか言いようがない科学者が多数輩出されています。そこまで有名ではなくても医者や弁護士、研究者といった高度専門職人材としてのキャリアを歩む人が多いのが特徴です。
ナチス時代は、ユダヤ人迫害の影響で医者などの人材が不足し、その影響でミュージカル『サウンド・オブ・ミュージック』のモデルとなったゲオルグ・フォン・トラップとマリア・フォン・トラップの子であるルーペルトも医学生でしたが、大学を卒業するとすぐにウィーンの病院でのポストを打診されたという事実があります(ナチスからのこの打診を断ったことが、米国への一家亡命の理由の一つです)。
橘玲氏の著作『言ってはいけない』によると、ユダヤ人のなかでもスペインに住んでいたセファルディー、中東~北アフリカのミズラヒムなどはとくにIQが高いわけではなく、東欧に住んでいたアシュケナージ系だけが平均IQが112~115と高い知能を示すとか(IQ100を偏差値50とすると、このIQは偏差値60に相当します)。
このような高い知能を保っている理由としては、ユダヤ人差別により職業が制限され、金融業で生計を立てるしかなかったこと、これにより計算能力に秀でた者が多かったと推定されること、さらに他民族との婚姻がほぼなかったために数十世代のうちに知能に関する遺伝的変異があっても不思議ではないことが挙げられます。
DNA分析によると、今日のアシュケナージ系ユダヤ人は祖先である中東人の遺伝子を50%ちかく保有しており、過去2000年で混血率が1世代あたり1%未満だったことを意味するものであり、このように同族婚が極端な場合は有利な遺伝的変異は集団内に蓄積されます。
ただしこのアシュケナージ系ユダヤ人は稀で重篤な遺伝病を持つ率が高く、遺伝性乳がんなどの有病率は他の欧州人とくらべて100倍も高く、高い知能を持つという「進化」の代償としてこのような弱点を抱えることになったのではないか・・・。このような仮説を述べている研究者もいると、『言ってはいけない』に書かれていました。
多様性がないことが弱点?
大航海時代、新大陸に存在したアステカ帝国とインカ帝国も感染症によって滅んだことは広く知られています。教科書的な理解では、スペインの軍事力が2つの帝国に勝っていたからだとされていますがそれ以上に大きな要因となったのが欧州から持ち込まれた天然痘でした。今まで閉ざされた世界に暮らし、生物の多様性でも南北アメリカはユーラシアほどではなかったため、様々な感染症に対し新世界の人間は抵抗力を持っていませんでした。インカ帝国の場合は人口の60~90%が天然痘で命を落としたと言われています。
このような事実を目にすると、クローズドな環境に身を置くことはある意味平和でもあり、また自分の優位性をさらに高める手段でもあるものの、何かしらの異物と遭遇したときにあっという間にこれまで築き上げてきたものが崩れ去ってしまうという危うさがあると思わざるを得ません。
これは民族だけではなく個人についても言える話であり、たとえば音楽やスポーツで際立った才能を発揮したがゆえに早期教育でそればかり詰め込まれ、大人になってからその道が行き詰まったときにそれ以外の方法で食べていく方法を全く思い浮かべることができず、途方に暮れてしまう・・・、という事例はかならず今現在もどこかにあるはずです。
やはり民族全体としても個人としても、「まわり道」があったほうがトータルで見たときに強靭になれるのかもしれませんね。
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