たまーにインターネットで見かける「渡辺麻友は結婚して山梨にいる」説。
私は渡辺麻友さんをいたく応援しており、今なお「出逢いの続き」などはしょっちゅう聴いています。
他の有名人もそうですが、渡辺麻友さんをめぐり、なぜ証拠に基づかない珍説がとくにインターネットで見られるのか不思議でなりません。

でもこれってインターネットの特徴がよく出ていると思います。誰もが思ったことをそのまま書けてしまうという意味で。


インターネットで謎の風説が流布される理由

最近ではGoogleのアルゴリズムが進化したのであまり見かけなくなりましたが、根絶されたわけではないのがいい加減なネット記事。いわゆる「こたつ記事」ですね。

NHKオンデマンドでは『ねほりんぱほりん』という番組のうち、「あるこたつ記事ライター」というエピソードを視聴できます。私のこのブログ記事も「あるこたつ記事ライター」にヒントを得て書かれています。
ちなみにこたつ記事とは、家から一歩も出ず、取材は一切行わずに自宅でネット検索とコピペを繰り返すことで作られた安直な記事のことを指します。

「あるこたつ記事ライター」の内容を短くまとめると、
・「年収3億?」(クエスチョンマークがあることに注意)、「・・・の声も」のように未確認情報をあたかもそういう事実があるとでも言いたげにする。しかし責任を取らなくて済むように、曖昧な表現にするのがコツ

・人の耳目を集めるために、ちょっとした芸能人のやり取りが「激怒!」のような見出しにされてしまう

・家電製品のレビューは、自分が使うわけではなくネットの口コミを良い印象になるように切り貼りする(発注者がそのようにライターに指示している)。

・記事は基本的に捏造だというライターも。たとえば「ママ活をするキャリアウーマン」などはライターの「恋愛には正解がないから」という勝手な主張に基づき、自分の想像で書き連ねたもの。この他、「ナンパスポット10選」「不倫カップル向け温泉紹介」も、ライターが看護師やOLになった自分を想像してことごとく妄想で書いたとか。このような嘘100%の記事を社会に公表したことは「何も思っていない。信じたのはあなたでしょ」というスタンス。

・こういう記事がネット上に溢れかえり、ついに2016年12月のWELQ事件へ。

・・・と、番組の内容はこのようなものです。
WELQ事件とは、「頭痛は地縛霊が原因かもしれない」といったデタラメな医療情報を多数ウェブサイトに掲載し、そのことで収益を得ていたというもの。Weblio辞書によると、

いわゆるキュレーションの形を取るメディアが実情は外部ライターに記事を発注して記事を量産させている事実上コンテンツファームに等しい状態である場合があること、記事内容は他のウェブサイトから情報を寄せ集めた不確実・低品質なものになりがちで、そうした低品質な情報がウェブ検索結果の上位に位置づけられユーザーの利便性を損なう場合があることなどが改めて浮き彫りになった。問題視された等のサイトでは、対象の文飾を除けばほぼ他サイトのコピペという記事もあれば、記事中に挿入された画像が直リンクとなっているなどの問題もあった。

たとえニセ情報であっても、Google検索で上位を独占できれば訪問者も増加し、それに比例して広告収入も増えるわけですから、検索上位を得るためのテクニックを駆使してまで「頭痛は地縛霊が」のような嘘を書いていたわけです。

もちろんGoogleも手をこまねいていたわけではなく、YMYLネタ(Your Money, Your Life)つまりお金と健康にかかわる情報は専門性、権威性、信頼性を重視する検索アルゴリズムへ改良されることになりました。
とはいえ真偽不明の情報がネットに出回るのをゼロにできたわけではなく、「この事件は〇〇という団体が米国政府に働きかけたからだ云々」といった陰謀論が現れたり、芸能人にまつわる信ぴょう性に欠けるゴシップ記事がしょっちゅう出てくるのはご存知のとおりです。

このように、インターネットの世界では、法人が運営しているウェブサイトですら「ここに書いてあることは本当なのか」というチェック機能が働きづらく、さらには掲示板やSNSでは専門知識や経験がゼロであっても誰でも情報発信をできてしまうという致命的欠点があります。しかもデジタル情報ですから、コピペによって安易に拡散してしまいます。

書籍の場合であれば、普通は校閲担当者が著者の文章に対してファクトチェックを行い、事実確認を進めたうえで出版となるわけですから、インターネットの記事とは信頼性が格段に異なるでしょう。

2ちゃんねるの設立者であるひろゆき氏は「うそはうそであると見抜ける人でないと(掲示板を使うのは)難しい」という言葉を残しています。すなわち、この記事冒頭で述べたとおり、私のブログ記事を含め、たとえ素人であっても誰もが思ったことをそのまま書けてしまうのがインターネットであり、発言すべきでない人が発言しているのがインターネットであり、「ネットに書いてあること」は言い換えれば「そこにそういう文字が並んでいる」だけであり・・・、そしてそれが確かな事実かどうかは完全に別なのです。

これは、例えばあなたが会社で新卒採用担当になったとして、「私はバスケ部の副部長で、リーダーシップがあります」と自己PRする学生の話を聞いたとします。たぶんあなたはこの話を信じないでしょう。ネットの文章も同じです。東スポやムーの読者のようにわざと騙されて楽しむという高等テクニックもありますが。蛇足ながら、夏目漱石の小説のように大事なことがあえて文章化されていないため、読者自身が気付かなければそれで終わりという場合もあります。

それにしても渡辺麻友さん、もう会えないけれど元気で幸せに暮らしているといいな・・・。