ラジオ番組『星のドラゴンクエスト presents 日向坂46「佐々木美玲のホイミーぱん」』は2022年3月をもって終了しましたが、2022年7月現在、Audeeで今なお聴くことができます。

面白いのが、2022年1月14日(金)の放送回です。
https://audee.jp/index.php/voice/show/39443


物事の変なところが気になるという佐々木美玲さん。

パンあるじゃないですか。小麦でできてるじゃないですか。小麦は何でできるんだろうとか。
床ってどうやってできたんだろうとか。その作る素材あるじゃないですか。その素材自体はどこでできたんだろうとか。そういうのすごい考えちゃうんですよね。頭良くないのにそういうの気になっちゃって。

よく思うんですよ。電車あるじゃないですか。上を走る電車。モノレールなのかな。まあわかんないんですけど。そういう電車に乗ってて街を上から見てるとなんかすごいなって思っちゃって。せかいってすげー! って思っちゃって。だって元はといえば私たちってサルだったじゃないですか。サルだったからなんかこの世界ができたのってすごいなって思っちゃって。だってサルからどうやって人間になったんですか。だからそれ自分で調べてくれって。分かりました。また関係ない話になっちゃって。

(上記リンクの22:05辺りからこの話は始まります)

要するに物事がこの世に現れるまでにどういう因果関係があったのか・・・、ということを想像すると、世界の広さを痛感するということのようです。

なんだかトルストイの『戦争と平和』みたいな世界観! この小説は文庫本で2,800ページくらいあります。ものすごく長いです。本当はもっとコンパクトに作れたはず。
ところがトルストイは総勢559人にも及ぶ登場人物を描きます。ナポレオンのような英雄から、そこらへんのおっさんまで、これでもかこれでもかと人間だらけ。とにかく人間を沢山描くことが世界とか歴史とかのスケール感の表現につながっているらしいのです。

主要キャラクターの一人、ピエールはロシアに攻め込んだフランス軍の捕虜になり、そこでカラターエフという老人と知り合います。カラターエフはピエールと出会ってそれほど日が立たないうちに死んでしまうのですが、無限に広がるロシアの大地を彷彿とさせる哲学的な発言でピエールの考え方に大きな影響を及ぼした彼の死がピエールを揺さぶります。その心理状態が影響して、スイスで地理を教わった昔のことを夢に見るのでした。
「待ちなさい」と老教師は言った。そして彼は地球儀をピエールに示した。その地球儀は、境界の一定していない、生きもののようにゆれ動く球体だった。表面はびっしりとくっつきあった無数の水滴からなっていた。そしてこれらすべての水滴が動き、まじりあい、いくつかの水滴がひとつにとけ合ったり、ひとつが多くの小さな水滴に分れたりしていた。どの水滴もひろがって、広い場所を占めようとするが、他の水滴もねらいは同じなので、押し合いをし、ときにはつぶしたり、ときにはひとつにとけ合ったりしていた。

「これが人生というものだよ」と老教師が言った。

(中略)

「中心に神がいる、そして、どの水滴もひろがって、なるべく大きく神を映そうとする。そして表面でひろがり、とけ合い、つぶれて、底へ去り、そしてまた浮き上がってくる。そら、あれがカラターエフだ、そら、ひろがって、消えた。<わかりましたか、坊や>」と老教師は言った。
つまり世の中にいる無数の人々、それこそナポレオンから農民Aまでみんながそれぞれの意志・都合で言いたい放題言ったり暮らしたりしまいには戦争まで始めたり・・・。そういう有象無象が人生であり、その集合体が歴史であり、歴史が神の意志を図らずも反映している・・・。トルストイが膨大な登場人物を投入してまで言いたかったのはそんなところのようなのです。

で、改めて佐々木美玲さんの発言を振り返ると・・・。
電車あるじゃないですか。上を走る電車。モノレールなのかな。まあわかんないんですけど。そういう電車に乗ってて街を上から見てるとなんかすごいなって思っちゃって。せかいってすげーって思っちゃって。だって元はといえば私たちってサルだったじゃないですか。サルだったからなんかこの世界ができたのってすごいなって思っちゃって。だってサルからどうやって人間になったんですか。

たしかに東京モノレールに乗って周りを見渡すと都心のウォーターフロントの光景が広がります。目に入ってくるのはタワーマンションだったり、東京港の港湾設備、港に出入りするコンテナ船、羽田空港を発着するジェット機・・・。そりゃせかいってすげーって思いますわ。

どうしてサルが飛行機を飛ばせるようになったのか、この世界が出来上がったのも色々な人間が何万年、何千年とそれぞれの生活を積み重ねてきたからに他なりません。その結果として現代社会があり、トルストイが言うように歴史を動かすのは民衆なのです。

・・・と考えると、佐々木美玲さんの「せかいってすげー!」は文学の出発点ともいえるものを無意識のうちに探り当てたとも言えるでしょう。すげー!! (なわけ、ないか。)