表参道にある根津美術館。つい青山とか表参道、原宿だとチャラいエリアだと思われがちですが案外そうではなくて、こういう静かな場所もあります。

ここは東洋美術を主に展示しており、仏像とか古代中国の出土品など、いずれも貴重なものばかり。
しかし何より素晴らしいのは、都会のど真ん中にあって庭園があるということです。
しかもかなり広くて静かです。これぞオトナのためのスポット。東京は坂の多いエリアですがこの庭園も坂の斜面に造成されているのでアップダウンがあり、その傾斜が景色に趣を添えてくれます。

美術館と庭園という組み合わせが心憎く、しかもそれを表参道というエリアで楽しめるというのはよい意味でミスマッチとしか言いようがありません。

都心の喧騒に疲れたら、一度根津美術館を訪れてみるとよいでしょう。まずは竹が植えられたエントランスからして雰囲気満点。そして入場するとまずは如来像、観音像などが立ち並んでいます。こういうところに足を運ぶ人は当然ながらそういうものを期待してやって来ているわけであって、お上品な人たちばかり。原宿から歩いてきた人は竹下通りとの雰囲気・年齢層のギャップに驚くことまちがいなし。

ぜひ注目したいのが、古代中国から出土した二匹の羊が合体(?)したような形の水瓶(?)です。宗教儀式に用いられたものと思われますが、これが妙にかわいいのです。同じような感想を持っている人が多いのでしょう、ミュージアムショップでもこれをかたどったお土産がいくつも売られています。

庭園にはカフェも併設。席数が20しかないのでたぶん並ぶことになってしまいますが、美しい庭を眺めながらの「本日の紅茶」や抹茶ラテはなんという贅沢な休日でしょうか。

こういう空間に身をおいて味わう時間の貴重さというのは、若い人にはやはりわからないでしょう。ある程度年を重ねて、自分にとって大切なものは思っているよりも早く、しかも思いがけないタイミングで失われてしまうことに気づくまでは、老舗や伝統の重みというものを身にしみて分かるようになるまでは、仏像のありがたみもわからないでしょう。

根津美術館を出ると、来た道を引き換えして表参道ヒルズの前を通り、竹下通りから原宿、時間があれば明治神宮を見るのもよいでしょう。原宿というとチャラいように見えてしまいますが、こういうルートで歩いてみると東京の奥深さにもきっと気づくはずです。

もちろん竹下通りはメインとなる道を歩くだけではなく、一本外れたところにあるブラームスの小径がよいでしょう。高校生たちが集うクレープ屋から50mしか離れていないのになぜかおしゃれなレストランやブティックが立ち並び、ここだけヨーロッパな雰囲気にあふれています。なぜショパンでもパガニーニでもなくブラームスなのかは謎ですが、ブラームスの作品を知る人は「たしかにね」とうなずくこと間違いなし。ネーミングセンスが光ります。

・・・と、原宿について陰キャかつ友だちいない私が書くのも不思議ですが、時間のある方、デートコースに悩んでいる方は足を運んでみるのもいいでしょう。