2011年に英国ロイヤル・バレエ団で初演された『不思議の国のアリス』がこのたび新国立劇場で上演されました。
作品自体はもう説明は不要でしょう。ルイス・キャロルの有名な原作に音楽と踊りをつけるとこうなった・・・と言ってしまえばそれだけですが、音楽、踊り、舞台美術などなどが高い水準で組み合わされるとこうなるよ、という最高の事例でしょう。
まず音楽が面白い。オーケストラのなんと1/3を打楽器が占めています。いろいろなリズムの刻みで小気味よく物語が進行します。しかしこれだけ沢山の打楽器をかき集めるなんて、まずその着想が際立っています。2時間超の音楽で、やはりイギリス風というか(当然か)、キレッキレの音でスパスパと進みます。そして第3幕には『眠れる森の美女』の「ローズ・アダージョ」のパロディ。これはハートの女王によって踊られますが一応バレエという伝統芸能へのオマージュだということになっています。でもそこに笑いを忍び込ませるのはイギリス人らしいです。
踊りといえば見逃せないのがマッドハッターのタップダンス。バレエとは対照的な動きのタップダンスを見事に作中に織り交ぜ、しかも何一つ違和感がないのはこれが「不思議の国」の出来事だからでしょうか。
舞台美術も雰囲気満点、これぞ誰もが想像する『不思議の国のアリス』でしょう。
しかもプロジェクションマッピング技術まで用いているのですから引き込まれないはずはありません。完璧なダンスにプロジェクションマッピング・・・ん、Perfumeか?
紫色の(ピンクではなく)衣装をまとったアリスといい、白ウサギ、チェシャ猫、イモムシ、これもなんともカラフルなこと、見ているだけで幸せになれます。
そしてトランプたちのコール・ド・バレエは衣装が赤白黒のシンプルな色使い。そこに整然としたアンサンブルが組み合わされるとカジノの支配人が熟練の手付きでカードを切るさまを連想してしまいます。
会場入口で配られていたパンフレットによると、最後の裁判の場面でアリスが一人を押し倒すと次から次へと倒れ込んでいき、全員が崩れ落ちてしまうと書かれています。つまりみんなトランプの札でしかなかった・・・、というもの。
これはネタバレになりますが人間ドミノ倒しです。西日本出身の私は、つい吉本新喜劇で登場人物一同がずっこけたりセットが崩壊するアレを連想してしまいますが、まさかこれをバレエで見ることになるとは・・・。
ともあれコンテンポラリーに分類される作品でありながら、現代作品を鑑賞してここまで引き込まれたのは初めてです。
うまいことに、先日衝動買いした英国ロイヤル・バレエ団の15枚組DVDセットに『不思議の国のアリス』も含まれています。改めて映像でじっくりと見直してみたいと思いました。
(しかし2022年6月現在、ものすごい円安なのに15枚組で10,990円って価格はバグってますね・・・。ブルーレイもありますがパソコンで再生するとうまくいかないことが多いので私はDVDにしました。また、価格は取扱店により多少異なります)
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