ヴァイオリン学習者が避けては通ることのできない練習曲、クロイツェル。

これを避けて通りました、逃げました、スルーしました、投げ出しました、という人はたぶんそのまま挫折してしまうでしょう。
クロイツェルに正面きって向かい合って、バカ正直に1曲めからチャレンジして痛い目を見た人もきっといるでしょう。なぜかこの練習曲集はやけに難しいのが一番はじめに掲載されています。どうしてそういう構成になっているのかは謎ですが、先生に習っていると1曲めは「これは難しいから後回しにしろ」という指示が来るのが普通です。

で、1桁台の曲からだんだんと生徒の弱点を補強しつつ進めることになります。

そんなこんなでクロイツェルの第8番にたどり着くと、こんな音符が並んでいます。


8


アレグロ・ノン・トロッポ。ホ長調なのでシャープは4つ。

まずはD線でミ、ファ、ソ、ラと弾いてA線に移ります。そしてシ、ド、レ、ミと音を出してみて、音程を確かめてから実際にこの曲を弾いてみるのが良いでしょう。

YouTubeなどでも親切な方がお手本動画をUPしてくれていますから、それを見ながら自分もマネしてみるのも一つの手だと思います。

この曲はあくまでも分散和音なので一つ一つの音の間隔が適切でなければなりません。
そうしないと、「ミとファがやけに近いな」「ソとラの間が妙に狭いぞ」という違和感を感じることでしょう。ヴァイオリンという楽器は残酷なもので、そういう粗は自分はあまり気づかなくてもお客さんには完全にバレているのです・・・。

演奏するほうは目の前の音を追いかけるのに必死になりがち。
ところが聴いている側は、分散和音を一連の音の流れとして感じ取っているものです。(というか、分散和音はもともとそういうふうに聴こえるものです。)このため、ミソシ~という流れはミとソとシという「1つの音が3つ並んでいる」のではなく「3つで1つの音」のように受け止められます。
だからこそ、音程がきっちり確保されていないとクロイツェル第8番は「なんだか音痴」状態になってしまいます。

手元にピアノがあれば一番手っ取り早いのですが・・・、そうではない場合はあまり推奨されることではないのですがクリップ式チューナーを使うのも一つの手でしょう。ギターのチューニングの場合、クリップ式を使う人が多いですが、ヴァイオリンでこれを使っている人はあまり見かけません。

ヴァイオリンのスクロールの部分に挟んで音をだすとメーターで音が高いか低いか一目でわかるようになります。チューナーアプリというのもありますが、スマホは楽器にくっつけることはできないので、ヴァイオリンと少し離れたところ(たとえば譜面台の上とか)に置くことになり、ちょっと見づらいので使いやすさという点ではクリップ式チューナーに軍配が上がります。

チューナーを使いながら毎日音階や分散和音を鳴らしていると、あら不思議自分でも気づかぬうちに音程感覚が身についてきて、「こりゃ低いわ」「しまった微妙に高い」ということが一瞬で分かるようになります。大人になってこういう感覚が身につくとは正直思っていませんでしたが、やはり毎日音程をチェックしながら音を出していると結局体が覚えてしまうんですね・・・。

分散和音なり音階なりでお悩みの方は、チューナーで自分の音を確かめながら弾いてみるというのをダメ元でもいいのでぜひトライしてみていただければと思います。