インターネットで「一人旅」というキーワードを検索すると、「一人旅 かわいそう」という言葉が候補として上がってくることがあります。ということは実際にそういう組み合わせで検索している人がたくさんいるんですね。
「一人旅 かわいそう」で検索する理由はなんとなくわかります。きっと「旅行は複数名で行くものだ」と思っているのでしょうね。たしかに家族旅行とか修学旅行とか、子供の頃から旅行といえば集団がつくものだと刷り込みを受けてしまえばそういう発想になったとしても不思議ではありません。

だからこそ「一人旅 かわいそう」なのでしょう。

案外かわいそうではない一人旅のメリット

旅というものが何なのか考えてみると、一人旅のメリットは推測がつくはずです。
私たちは毎日旅をして暮らしているわけではありません。家があって、そこから出かけて帰ってくる。その一連の動きを「旅」と呼んでいます。旅は明確に「始まり」と「終わり」があり、1泊2日とか2泊3日といったように時間によって区切られています。

その限りある時間で、例えば新幹線で目的地に向かって移動したり、東大寺を見たり大阪城を見たり食事したりします。こういう「いつもとは違う雰囲気」を味わうのが旅の醍醐味。逆に渋滞にはまって時間を無駄にすると「なんのための旅行だったんだ!」ということになります。

つまり旅行は、「限りある時間」を移動とか観光とかに割り振っていく、いわば「時間配分ゲーム」なのです。
自分が満足できる行動になるべく時間を配分できれば「勝ち」で、全体の時間のなかで渋滞とか行列とかが占める割合が高くなればそれだけ満足度が低くなるので「負け」。


こう考えると、一人旅のメリットも浮かび上がってきませんか。
2人、3人で旅行するとどんなに仲のいい友人同士であっても、「ぜったいこれは見たい」「この名物を味わいたい」という「自分が満足できるポイント」は一致しないのが普通です。

それ以外でも、ホテルはこれくらいのランクじゃなきゃだめだとか、べつにビジネスホテルでもいいとか・・・。朝ごはんはゆっくり食べたいとか、さっさと食事を済ませたいとか・・・。

こうなってくると、時間をどう配分していくかという「旅の満足度」を左右するものの主導権は、人数が多くなればなるほどあなたの手からこぼれ落ちてゆくことになります。
2人だけならまだしも、学年全体で行く修学旅行はスケジュールが完全に決まっていて個人の意見を反映させる余地が少ないのはその現れといえるでしょう。

そう、一人旅なら自分が時間をどう使おうが自分で決めたことが正義なので、明確に「この街でこれをやりたい」という目標が決まっている人にとっては一番有利なのです。
「一人旅はかわいそう」と思っている人は、じつは「旅先でやりたいことがない人」「とりあえず集団に所属していれば安心する人」「言われたことをやって、ただみんなと同じことをして楽しい人」なのかもしれません。それって日本人のほとんどなんですけどね。

一人旅をする人は胸を張っていい

だから私は、一人旅をする人は胸を張っていいと思います。
自分のやりたいことがはっきりと決まっていて、そのために限られた時間を使うという強い意志があることの何よりの証拠だと思います。

こういう人は、人と違った意見を持っていてしかもそれを大切にするので、ぜったいに安易に他人に同調しない傾向があります。それはそれで大変素晴らしいことだと思います。学生のうちから一人旅が好きだという人はサラリーマンには向いていないと思いますが、アーティスト的な気質があるのでそういう感性を一生持ち続けてほしいですね。