あるヴァイオリニストが、「左手は労働者、右手は芸術家」という言葉を言ったとか。
左手は音程を取るだけですが、右手は弓をつかって音のニュアンスをつける重要な役割を担っていることを言い表しているようです。
面白いもので、エレキギターを弾いていても右手にギタリストの感情が現れがち。緊張しているとどうしてもピックがぷるぷる震えてしまい、音も力がなくなります。逆に盛り上がっているとストロークの振り幅も広くなり、強気な音になります。
たしかにたとえ楽器じゃなくても、緊張してマイクを落としてしまったという話はよく耳にします。
私なりにヴァイオリンを弾いていると、この弓の使い方が音楽の表情を作る「決め手」となるのだと当たり前の事実を見つめざるを得ません。
ヴァイオリンの弓の使い方。エネルギー効率を高めるにはどうしたらいいのか
これは単に自分が下手くそなだけの話ではありますが、レッスンを受けていると先生から「弓の進路が曲がっている」「弓を当てた時のガッという感覚を大事に」「腕が謎に上下している」などとよく(というかほぼ毎回)指摘を受けます。
これは要するに右手の動きが美しくないということでしょう。
美しくないとはどういうことか? それは、弓を動かすエネルギー効率が悪いということです(きっと)。
例えば1Kgの圧力をかけたとしても、持ち方が悪くて300gぐらいどこかへ分散してしまっていたり、常に1kgの圧力がかかっているべきところ、弓の真ん中までダウンさせたところでなぜか無意識に力を緩めてしまい、800gにまで圧力が減少してしまっていたり・・・。
他にも右腕がまっすぐ動いていないのであれば、音にうねりができてしまうのも当然であり、まっすぐ動かせた時よりもたくさんのエネルギーを投入したのに、獲得できた「音」という成果物はちょっぴりということになってしまいます。
思えばカラヤンといいバーンスタインといい、名指揮者と呼ばれる人たちは、全員が全員違ったように指揮棒を振っていながらも、それぞれが個性的かつ美しい動きをしていました。
これは無駄な動きを削ぎ落として行った結果、自分の音楽に必要な動きだけが残ったということでしょう。
同じく一流ヴァイオリニストの動きもアマチュアと違い、右腕の運びにまったく迷いというものがありません。私と同じ曲を弾いているはずなのに、音がビシバシ客席まで届いてきます。
つまるところ指揮者もヴァイオリニストも、無駄のない動き=エネルギー効率の高い動作を身につけているということに違いありません。
では一体どうやったら自分がそういう動きができるのか?
こればかりは、自分の腕の感覚という他人に分かりようがない部分のことであり、先生もそういう肉体的なことを言語化して生徒に説明することはプロとはいえども至難の業でしょう。何度も試行錯誤して自力で「これだ!」というものを獲得するしかないのかもしれません。
実際にプロのヴァイオリニストの著作をいくつも読んでみても、弓の扱いは大体当たり前なことしか書かれておらず、「この曲のこの部分の弓使いはどうしたらいいのか? 具体的にどうすれば芯のある音になるのか?」というリアリティのある説明は一切ないのが実情です。
ヴァイオリニストへの道はかくも険しい!
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