これは2022年3月6日のお話。
池袋にある東京建物 Brillia HALLで行われたNBAバレエ団の『ロミオとジュリエット』。

いつの間にか池袋の街並も一変し、こじゃれた文化拠点ができていました。
これで池袋に来る目的も東京芸術劇場だけではなくなりました。

バレエそのものは有名なシェイクスピアの原作にプロコフィエフが音楽をつけたもの。
技巧が目立つ・・・というよりもドラマ性重視の振り付け。さすが演劇を下地にしただけのことはあります。

それはさておき、公共施設だから仕方ないのか、感染症対策として「余計なお世話だろ」というような余計なアナウンスが・・・。


「しゃべるな」と言っているお前が一番うるさい

「感染症予防のため、ホワイエ、客席での会話はお控えください」。
これが休憩時間中に頻繁に繰り返され、しかもそのアナウンスが一番うるさいのでした。
ご親切にもマイクで拡声する係員もいれば、声を張り上げてホール内にアナウンスを響かせる奴も・・・。

そしてお客さんはそのアナウンスを無視して普通に会話。実に日本的光景である!!

日本は昔からこんな感じでした。「ああせよ、こうせよ」というアナウンスがやたらと多いのです。
エレベータには「1階です、こちらのドアが開きます」。

エスカレータには「エスカレータにお乗りの際、手すりにつかまり……」という放送が流れています。

トイレに近づくと、「右が男子トイレ、左が女子トイレです」。見りゃ分かるわ。

銀行のATMは「いらっしゃいませ、毎度ありがとうございます」。機械に言われたくないわ。

電車に乗ると「次は三鷹、三鷹」。

極め付きはサントリーホールの開演前アナウンス。「携帯電話をお持ちの方は、云々」。20年前はこれだけだったのに、「補聴器は正しく装着し、云々」がいつの間にか追加され、東日本大震災の後には「このホールは十分な耐震構造を備えておりなんちゃら」。2020年からは「マスクを着用してなんちゃら」。

とはいえこのアナウンスで誰かが具体的に得をしているわけではありません。要するに自分たちが「やってます」というアリバイのためにやっているのでしょうね。

警察署の前を通ると「守ろうよ 私の好きな 街だから」といった防犯には何の効果もない垂れ幕が。
「世界が平和でありますように」という御札と同じで何の意味もありません。
国民もそれを分かっているので完全に無視。

感染症対策もこの流れのなかで理解されるべきであり、日本人はえてして保育園児~学生の騒音には目くじらを立てるのに、低レベルな公共放送には何も言わないのです。

そして「感染症予防のため、ホワイエ、客席での会話はお控えください」のアナウンスが一番うるさいのは、感染症予防という「優しさ」を装ったただのアホです。
そしてアホを無視していく(介入しない、村八分にする)のもある意味日本の文化です。

係員は命令されてそう言ってるだけに過ぎないのですが、西洋発祥の文化であるバレエの公演現場でこのような日本的光景が見られるのは、珍景としか言いようがありませんでした。