「ポーランド軍に攻撃されたので、反撃します。正当防衛です」
「連合軍からの脅威から守るためにデンマークを占領します」

どちらもヒトラーの言葉です。

このように侵略戦争というのはあからさまに「〇〇を獲得するために武力行使します」という人はいません。「仕方なくこういうことをやっているんです」という装いのもとに始まるものです。

2022年2月24日、とうとうロシア軍はウクライナ侵略を開始しました。
この国の体質というのは帝政ロシア時代も、ソ連時代も、今のロシアもなに一つ変わっていないことを浮き彫りにしました。こういう国が日本の隣にあるというのは安全保障上明らかな脅威でしょう。


チャイコフスキーやラフマニノフを生んだ国の不思議


誰もが知っている有名なチャイコフスキーのバレエ音楽『くるみ割り人形』。



うっとりするようなメルヘンに満ちあふれた素晴らしい作品です。
チャイコフスキーはこの他にも『眠りの森の美女』『泊帳の湖』という名作を残しました。
彼のおかげでバレエの世界はどれほど豊かになったことでしょうか。

ラフマニノフの『ピアノ協奏曲第2番』。


ピアノ独奏がロシア正教の鐘を模した、ゆっくりとした和音連打を、クレシェンドし続けながら打ち鳴らします。そのあと弦楽器群がロシア情緒に満ちあふれた厚みのあるロマンチックなメロディを奏でます。
数多あるピアノ協奏曲のなかでも抜きん出て人気が高く、実際に耳にしたことがあるという人も多いでしょう。

ただチャイコフスキーといいラフマニノフといい、いえ彼らに限った話ではなくグラズノフなりショスタコーヴィチなり、どこかしら「大地に根ざした悲しみ」「救いようがない暗さ」を感じさせることがあります。これはドストエフスキーの小説を読むともっと顕著でしょうし、20世紀のソ連に生きたソルジェニーツィンの作品は「悲しみ」などというレベルではありません。

こうした感情はどこから来るのか。個人的見解の域を出るものではありませんが、そもそも帝政ロシアというのは民衆にとっては基本的に圧政でしかなかったことが原因ではないでしょうか。
そしてその悪しき伝統は今にも脈々と受け継がれているようです。

なぜ、『くるみ割り人形』を生んだ国がスターリンを生み、冷戦による緊張をもたらし、21世紀にはウクライナ侵略などということをするのか・・・。ロシアの強権的体質とチャイコフスキーやラフマニノフの音楽が並び立つ理由は「圧政」にあるのではないかと思います。

ただ実際にはその国で生まれ育ち、その国特有の情緒というものを自分の心に授からなければ分からな領域なのでしょう。

ちなみにあるドイツのオーケストラ団員は日本に来て「なぜ羊のようにおとなしい日本人がこんなにベートーヴェンを好きなんだろう?」とつぶやいたとか。これも説明するのがえらく時間がかかる話で、すべて語り尽くしたとしてもいまいち理解してもらえないに決まっています。

結局はロシアの強権的体質といい、ロシア文学や音楽に底流する情感といい、外部の人には納得しづらい「何か」があるのでしょう・・・。