中国が推し進める一帯一路政策。中央アジアおよびインドシナ半島からインド洋周辺の国々と経済的な結びつきを強化するもので、覇権主義だという懸念がある一方で、大規模な投資が行われ急ピッチで開発が進む国もあります。

カンボジアもその一つ。かつては日本が最大の支援国でしたが、今では中国がその立場になりました。

というわけで3000メートルを超える滑走路をもつ空港が整備されたり(ただし軍事転用の可能性あり)、ビーチにリゾートホテルが立ち並んだり、そこへ毎年100万人の観光客を見込んだり、そのために数千人規模の雇用が生まれたり。

日本の停滞感とくらべると・・・、いえ比較の対象が間違っているでしょうね。

中国への食材輸出ビジネスも盛り上がっています。
NHKの「広がる“中国化” 一帯一路の光と影」というドキュメンタリー番組では「我々はバナナのファーウェイになるんだ!」と意気込む農産ビジネスの幹部社員に取材する一コマが。

既視感ある会話www

「このバナナは収穫するとき君たちが傷を付けてしまったんだ! もっと注意しなきゃいけないんだ!!」
幹部はカンボジアの若者たちをを指導します。

彼らは毎月に2度支給される給与が楽しみ。それで中国製のスマホを使って、中国のコンテンツを楽しむために通信料を払っているのです。完全に中国に浸っていますがその自覚はないようです。

幹部たちは幹部たちで、仕事が終わっても食卓を囲みながら熱心に議論します。真面目だな!!

「我々中国人は仕事を"自分のこと"と考える。40年間の改革開放路線を経験したからだ。しかしここのカンボジア人はそう考えず、モラルが低い」

あれっ、この会話、なんだか既視感が・・・。
昔の日本でもこんな会話がたくさん聞かれました。
マレーシアとかインドネシアに完成した工場の生産技術指導のために派遣された松下◯器とか◯芝の社員さんは、現地の労働者には「毎日出勤する」「時間を守って働く」という意識が希薄なことにまず驚愕します。

カルチャーショックを受けた社員さんは言います。
「我々日本人は仕事を"自分のこと"と考える。焼野原から立ち直り、高度成長を経験したからだ。しかしここのインドネシア人はそう考えず、モラルが低い」

実際に私が最初に就職した会社でもインドネシアに工場を持っていて、手が空くとゲームボーイで遊んでいたという話を聞きました。

そして時は流れ、日本経済は完全に地盤沈下して代わって登場したのが中国でした。

・・・が、バナナ会社の幹部も松下◯器の社員と同じようなことを言っています。これぞ歴史は繰り返す。(「我々中国人は仕事を"自分のこと"と考える」っていうのは、ずいぶんとテレビカメラを意識した発言に聞こえますね。まあいいでしょう。)

司馬遼太郎は『坂の上の雲』において、「楽天家たちは、そのような時代人としての体質で、前をのみ見つめながらあるく。のぼってゆく坂の上の青い天にもし一朶の白い雲がかがやいているとすれば、それをのみ見つめて坂をのぼってゆくであろう」と書いています。
バナナのファーウェイを目指す幹部ももしかしたらこういう気分なのかもしれません。でも若いというのは前を向くエネルギーにもなる一方で、無知や恥ずかしさでもあるのです。

坂を上り詰めた時、「会社勤めは結局は”社長の商品を売って社長の貯金を手伝ってたただけじゃないか"、"他人の時間を生きていただけじゃないか”」という悟りに達するかどうか・・・、それは数十年後にわかることでしょう。私はそのとき生きていないかもしれませんが。