世の中便利になったもので、電子書籍というものがあります。
おかげさまで「本棚がいっぱいだからなにか捨てなきゃ新しいのが入らないや」という状況を回避できるようになりました。

タブレット端末やスマホを買い替えてもアカウントを引き継げば新しい機器でも昔ダウンロードした本を読み続けることができるなんて、とてもありがたいお話です。

「やった! だったらもう紙の本なんていらないじゃん!」

そう思うのは早計でした。

電子書籍には意外な落とし穴がありました。


『「深い河」創作日記』電子書籍版の落とし穴
遠藤周作さんの晩年の大作『深い河』。登場人物たちはそれぞれの悩みを胸にインドへ向かうという宗教的な内容であり、『海と毒薬』『沈黙』『侍』など一連の純文学から引き継がれたテーマをもう一度訪ね、掘り下げたいという作者の強い意志が伝わってきます。

その創作日記もまた講談社文庫に収録されています。
そしてどういうわけか、ある日たまたまKindle版がなんと275円という驚きの価格で販売されていることを知りました。こりゃすぐにダウンロードだ!!



そうやって読み進めていくうちに、この作品を仕上げるために遠藤周作さんが味わった葛藤や苦しみがひしひしと伝わって来ます。
初稿を書き上げたあとで、順天堂大学病院に入院し、手術。「今日の手術ほど痛く、辛く、堪えられぬものはなかった。途中でこのまま殺してほしいと何度も思った」。

「この小説のために文字通り骨身をけずり、今日の痛みをしのがねばならなかったのか」。

このような思いを抱えつつも、なんとか書き上げた『深い河』は、遠藤周作さん自身が「棺の中にいれてほしい」と語るほど、彼の文学の総決算と言えるものでした。

・・・と、そこまで『「深い河」創作日記』電子書籍版を読み進めていくと、最後に愕然とする言葉が。

「本作品は、二〇〇〇年九月、小社より講談社文庫として刊行されたものを電子書籍化したものです。なお、対談は割愛しました」。


ん? んん?? 対談は割愛しました??

ということは講談社文庫の方に掲載されているが、この電子書籍版には掲載されてない何ページかがあるってことか!?

お金を払ってダウンロードして、最後のページにたどり着いて初めてわかったこの事実! そんなものは、本来であれば商品説明欄に事前に記載して読者に伝えておくべきことでしょう。が、アマゾンの商品ページには何一つそういうことは書かれていません!!

電子書籍にはこういう落とし穴があって、穴に落ちるまでそういう罠があるなんて気づきもしない・・・。手痛い教訓でした! 

大事な本は紙のほうがいい

そもそも電子書籍は、置き場所の問題から解き放たれている一方で物理的な存在感がなく、紙のページをめくりながら読みすすめるという読書の根本的な喜びに欠けるうらみがあります。

私は、哲学や人文書籍のような「人類にとっての普遍的な問題」を掘り下げた書籍は紙の本で買うようにしており、ビジネス書や時評のように「一時的な話題」をテーマにしている本は電子書籍にしています。
『夜と霧』や『アンネの日記』は電子書籍で読んでも私たちの心に訴えかけてくるものがあるはずですが、「本棚にずっと鎮座して、視界に入る」ということがないといつの間にか忘れ去ってしまいます。

これは私の経験則ですが、おそらく他の方も同意していただけるはずです。