ヴァイオリンを習っている人は、いつかは発表会という形で舞台に立つことになります。

最初のうちはザイツの協奏曲とか、ヘンデルのソナタとかでしょう。
ある程度うまくなってくると「G線上のアリア」「タイスの瞑想曲」「ヴォカリーズ」「精霊の踊り」など定番曲が選ばれがち。

とはいえ、この「ヴァイオリンの名曲」たちには限りがあります。
そうなってくると「さっきの人と選曲がかぶってしまった!」ということになってしまいます。
お互い気まずいですよね。「あいつのほうがうまかった」と落ち込んだり、「俺のほうが上手い」とか五十歩百歩のつまらないプライドを感じたり・・・。

こういうことを回避するためには、「まあまあ知られているが、知らない人のほうが多いかな」という曲を選ぶしかありませんね。なおかつきれいな曲であればさらに良し。

そんな曲あるのか・・・?

一応あるにはあります。クラシックの曲はそもそもアマチュアが演奏することを想定していない作品がほとんど。前提となる技術水準は、プロでないにせよ専門教育を受けていて当たり前。チャイコフスキーの『ヴァイオリン協奏曲』とかベートーヴェンの『クロイツェル・ソナタ』が動かぬ証拠です。

一方で私はヴァイオリンを弾くもののプロでもなんでもありません。
そんな私でも一応手が届く小品をご紹介いたします。数年くらい音階、エチュードをしっかりやっていれば十分太刀打ちできる曲です。私も実際に人前で演奏しました。

グラズノフ「瞑想曲」




グラズノフ(1865-1936)といえばいくつかの交響曲と、『ヴァイオリン協奏曲』、バレエ音楽『ライモンダ』が有名ですね。とくに『ライモンダ』はマリウス・プティパが振り付けを行った最後の傑作と言われています。

エキゾチックなメロディ、オーケストレーションがふんだんに使われた、どことなく東洋的異国情緒が漂う名旋律が魅力なグラズノフ。
小品「瞑想曲」も数分くらいの尺の中に懐かしさとか、憧れといったような感情が込められた佳品です。「ヴァイオリン名曲集」のようなありきたりなCDとか「ヴァイオリン発表会曲集」のような書籍とか・・・、それを持っている時点で「お前、ホントはそこまでヴァイオリン好きじゃないだろ」「ハイフェッツとオイストラフとグリュミオーの演奏を比べてみようなんて思ったこと一度もないだろ」と突っ込みたくなるような人(←ヴァイオリン学習者の90%以上)はぜったいにこんな曲を選びません。だって、そんな曲があるなんて最初から知らないし、そもそも自ら探しに行くこともないですから・・・。

この曲は当然著作権切れなのでIMSLPのようなサイトで楽譜を無料でダウンロードできます。
が、実際に人前で演奏をするとなったらやはり市販の楽譜を買うべきでしょう。
自宅のプリンタから出力された楽譜ってどことなく安っぽいですが、ちゃんとした紙に印刷された楽譜なら複数回の鉛筆による「書いては消し、書いては消し」に耐えます。
また、IMSLPで公開されている楽譜は古いものが多いため、今どきなら採用されないような運指になっていることもあります。

一度買った楽譜は一生もの(というか、下手をすると絶版になる)なので、1,000円~2,000円程度の出費ならここは惜しむべきではないでしょう。