2021年10月15日~2022年1月16日まで東京の三菱一号館美術館で開催されているイスラエル博物館所蔵「印象派・光の系譜」に足を運びました。

結論から言うと、「入場料はちょっと高い(1,900円)が、十分もとは取れる展覧会」だったと思います。
備忘のために感想を書き留めておきます。

1)まず目にすることができないはずの作品が並んでいる
そもそもこの展覧会は、海外旅行でわりと訪れがちなパリやロンドンの美術館からの貸し出しではないことに注意すべきです。
作品の出どころはイスラエル博物館。日本人でイスラエルに行く人というのは正直少数派でしょう。
つまりこの機会を逃すと、自分でイスラエルに行かなければこれほどの名品群を見ることができなかったということです。

一体何が展示されているのかというと、コロー、クールベ、セザンヌ、シスレー、モネ、ピサロ、ゴッホ、ゴーガン、ルノワール、ドガ、ルドン・・・、ほか多数。

コローの作品はたくさんありますし、あの銀灰色のノスタルジックな画風は想像のとおりです。
モネなら「睡蓮」でしょ、と相場が決まっており、今回もそのとおりなのですがこの「睡蓮」は今回の展覧会を逃すと見ることができません。

つまりチャンスは「今」しかないのです。


2)あの画家にこんな一面があった!
滅多に見られない作品を直に見ると、「え、この人ってこういう作品も描いてたの?」という発見があります。
私の場合はゴッホでした。

ゴッホといえば「ひまわり」に代表されるような、力強いタッチをすぐに連想します。
ところが彼は弟テオを頼りながらパリで暮らしていた間、印象派の影響を受けていました。
1887年製作「アニエールのヴォワイエ=ダルジャンソン公園の入り口」という作品は、なんの変哲もない門を描いていますが、なんの予備知識もなく見せられたら、これがゴッホだろうと一発で当てられる人はほとんどいないのではないでしょうか。

こういう「!」を見つけ出すのは美術館をめぐる最上の楽しみだと言ってもよいでしょう。


3)やっぱり「睡蓮」
モネの「睡蓮」。パリに行くと必ず見ることでしょう。もちろん国立西洋美術館を始めとして世界中の多くの美術館が「睡蓮」を収蔵しています。

だから、今更「睡蓮」なんてもういいよ、という気分になるかもしれませんが・・・、この展覧会の「睡蓮」は私たちが想像する「睡蓮」とはちょっと雰囲気が違います。

広く共有されている「睡蓮」のイメージは静的なもののはず。ところが今回の「睡蓮」は日光の当たり方や色合いが(つまりモネが選んだ、描かれている時間帯が)他の作品とは異なっているため、情熱的というか、本来動くはずのない植物や水面がどことなく動的なたたずまいになっているのです。これには驚きました。この展覧会のキャッチフレーズ「あなたの知らないモネが来る」は、決して煽り文句ではなかったのです・・・。



三菱一号館美術館の公式Instagramにも作品の写真が公開されていますが、やはり肉眼で見た感じとは若干異なります。これは会期中にぜひ足を運んでご自身の目で確かめていただくしかありません・・・。

ちなみにどれくらい混雑しているのか? ということが気になる方もいらっしゃるかもしれません。
私は2021年11月2日(火)という平日の真っ昼間に訪問しました。
平日昼なんてガラガラだろうとたかをくくっていたものの、思っていたより人は多かったです。
大ざっぱに言うと、12畳くらいの空間に10人くらいの人がいるほどでした。
他人のうしろ頭しか見えない、というコロナ以前の人気展覧会のような惨状ではなく、また密を避けるための規制もあることから鑑賞の妨げになるほどではないものの、つい最近までの美術館のガラガラぶりをイメージしていくと、予想と違った光景です。あくまでもこれは一個人の体験であり、これがすべてということは絶対にありませんが、何らかの参考になれば幸いです。