私は人間ドックを毎年受けるようにしていました。

職場でも健康診断が毎年1回ありますから、年に2回採血をしたり尿検査をしたり血圧を測定したり・・・、していました。

単純によくワインを飲むから肝臓の諸々の値と尿酸値が気になってるだけなんですけどね。

まあそれでもガンとかが早期発見できればと思っていました。

が、毎年人間ドックを受けていたのはさすがに余計だったかもしれないと思い始めました。

過剰診断でかえって不健康になる?

H・ギルバート・ウェルチの『過剰診断』という本を読むと、検査をしすぎることでかえって不健康になってしまうというパラドックスが指摘されています。

人間の体というのは100%健康体で異常がまったくないということはほぼありえません。
精密に調べれば調べるほど、「何か」が見つかる可能性は高まります。

問題は、その「何か」が本当にあなたの健康を損なうものなのかどうかということです。

たしかにCTやMRIを使って救われる人がいるのは確かですが、問題が小さすぎてのちのち症状を引き起こしそうにない異常を指摘される人もいます。この場合、治療にはメリットがなく、害をもたらすだけです。

例えばガンは成長が速いものもあればまったく変化しないものまで、様々な異常細胞を総称したものであり、非進行性であったり成長速度がきわめて遅いものであれば、それが見つかったところで症状が出たり、これのせいで死ぬことはまずないようです。

しかし緻密に探れば探るほど、そういう「どうでもいいやつ」が見つかってしまい、そのガンを治療しようとして抗ガン剤を飲む、手術をするなどの対応を行った結果、

①その痛みや合併症、手術や薬剤の使用などの身体的負担
②病気に対する不安などの精神的負担
③検査や治療に掛かる費用・時間などの物理的負担
④「癌患者」として生きることになるがゆえの社会的な影響

を負うことになります。これって、検査をした結果かえって不健康になるの典型例です。

このような過剰診断の実例として、福島県が挙げられます。

福島原発事故当時に福島県に在住していたおおむね18歳以下の方々を対象に、2011年10月より甲状腺検査が実施されています。これまでに約30万人がこの検査を受診し、合計で252人が2020年6月までに「甲状腺癌または甲状腺癌疑い」と診断されました。

が、甲状腺癌は癌の中では非常に予後が良く、特に若年者の甲状腺癌はたとえ転移・再発しても命を奪われることはめったにないとされています。さらに、福島県で健康被害が見込まれるほどの被ばくがあったとは考えにくいため、このような診断を継続することに専門家からも疑問が呈されています。

話を人間ドックに戻しますと、私のような健康な人間を検査しても何かが見つかる可能性は乏しく、ただただ安易な検査で健康保険組合の財政を悪化させることも懸念されます。

一体何のために人間ドックに行っていたのか、「過剰診断」という言葉を知ってから自分でも理解できなくなってきました・・・。