Cuvie先生のバレエ漫画『絢爛たるグランドセーヌ』の第16巻。
ヒロイン奏はとうとう英国ロイヤル・バレエ・スクールの10年生に1年間の編入留学を認められ、ロンドン近郊で研鑽を詰むことになります。

寮のルームメイトのひとりがキーラという女の子。
15巻から登場しますが、第一印象からして明らかにシャイな雰囲気ですね。

寮の部屋に入ってきたと思ったらドアをバタンとしめてまたそ~っと開けてこちらの様子をうかがったあとで静かに入ってきます。
そんな調子だから挨拶も小声、目も合わせてくれません。

昨年のルームメイトが進級できなかったことが大変なショックで、今なお引きずっているようでした。

そのまま物語は16巻に進み、彼女の性格が徐々に明かされてゆきます。

キーラの性格ってかわいいじゃないか!?

16巻では、学内の振付コンクールでキーラが毎年出品し、必ず優秀な成績を収めていることが判明。
前回は北欧神話をモチーフにした、控えめな彼女の性格からは想像しがたい不協和音が多用された音楽に合わせて踊るという意外なもので、しかもそこには友人の持ち味を理解し、引き出すという素晴らしい特徴がありました。だからこそその友人が進級できなかったことがなおさら心に響いていたのでしょう。

どうやらキーラは北欧神話に造詣が深いらしく、ワーグナーの『ニーベルングの指環』について普段の彼女とは打って変わって饒舌になります。
この『ニーベルングの指環』は『ラインの黄金』『ワルキューレ』『ジークフリート』『神々の黄昏』からなる4部作であり、全曲を通しで聴くと15時間はかかります。『神々の黄昏』なんかを実際に劇場で見るとしたら、4時に始まって休憩を挟みつつ、終わったら10時ごろだったというのはザラです。
普通のオペラハウスでは1年に1作ずつ、4年かけて上演するような、演じる人を殺しにかかっていると疑ってしまうような人類史上空前にしておそらく絶後の大作です。

が、ペラペラと喋り始めた自分に気がつくと、脱兎のごとくいなくなるキーラ。
前にもそういうことがあり、雪の日に20世紀の名バレエダンサーの映像を見ていると衝撃に打たれ、5時間ほどずっと外で座り込んでしまっていたとか。このときこそ振付師になりたいという未来の夢が芽生えた瞬間だった・・・。その時の衝撃を奏が理解したとき、同じ感動に打たれたときのことを思い出し、彼女はキーラの振付で踊らせてほしいと頼みます。友情が育まれた瞬間ですね!

このキーラの性格、かわいいじゃないか!? そう思えてなりません。

じつは友人のことを「私のダンサー」ととらえていて、その友人たちがいなくなってしまったことに苛立ち、奏に反発をしていたようです。しかも話すのがもともと得意ではないので、それがうまく表現できなかったとか。

でもその一方で自分が好きなものについてはたとえば北欧神話のように人前で深い知識を一気に話すなど、好きなものの掘り下げをするという気質があり、大人しげに見えても芸術的刺激を受けると居ても立っても居られないほどの衝動にかられて突然走り出します。

なんだかいかにも芸術家的な気質を備えていることが伺われますが、もしかしてHSPではとすら思えてなりません。
HSPとは、NHKのサイトによると
HSP(Highly Sensitive Person=とても敏感な人)は、病気や障害を指す医学の言葉ではなく、「気質」を指す心理学の言葉です。提唱したのは、アメリカの心理学者エレイン・アーロン。HSPには4つの特徴があるといいます。

①ていねいで深い情報処理を行う
たとえば、ナンバープレートや電話番号の並びに、意味を見出そうとするなど。

②過剰に刺激を受けやすい
日常的に街にあふれる音が、本人は耐えがたい騒音だと感じているなど。

③感情の反応が強く、特に共感力が高い
誰かの悲しい顔を見ると、同じように悲しくなるなど。

④ささいな刺激にも反応する
無自覚にメガネを拭いている動作に「私を嫌いだと思っているのでは」と考えるなど。

(https://www.nhk.or.jp/heart-net/article/451/より)
キーラがHSPだという証拠はありませんが、このような性格に近いものがあると考えるのはあながち的外れではないでしょう。

実際にこういう人と付き合ってみると「じつはメンヘラ気質で、夜中に電話で2時間も延々と話を聞かされた」ということも。とはいえあくまでもこれは漫画の登場人物であり、キーラのような意外性を秘めたキャラクターが物語のなかでいきいきと躍動しているのは読んでいて楽しいものです。

一番「わかる」と思ったのが、「わ 私いつも一方的に話しちゃって 親にもよく注意されたのについやっちゃうの。この曲のせいでここに入学する前いじめにもあって・・・」という一こま。これは私自身もたまにやるときがあります。自分の好きなこと、深く知っていることは誰かに伝えたい(分かって欲しい)という願いを誰もが持っています。(他人は「べつに知りたくないよ」と思っているのが普通で、そのことをわきまえることが大人だとされていますが。)だからこそ私はこうして細々とブログを運営して自分が気になっていること、面白いと思ったことなどを社会に公表しています(誰も読みに来ませんが)し、キーラの一気に何かを話すという癖には共感しかないのでした。

17巻以降でキーラはどういう姿を見せるのか、また楽しみが一つ増えました。