ヴァイオリンを弾いている人はだれもが先生からそう指導されるはずですが、備忘のために書き残しておきたいと思います。

フォルテとかフォルテシモと楽譜に指示があったり、コンチェルトなどの「ここぞ」という場面で決然とした音がほしい時、駒の近くで弾くとそれらしい音が出てきます。

なぜ駒の近くで弾くと強い音が出るのか? というと実際に指で弦を触ってみると分かるように、駒の近くになればなるほど弦は手応えが強くなります。つまり弓でそういう弦をこすれば強い音が出てくるのは当然ですよね。

実際に駒の近くで演奏してみると、キンキンしたような音が出てきて抵抗感を感じるかもしれませんが、案外客席のほうでは芯のある音に聴こえるようです。自分の声を自分で客観的に聞けないのと同じように、ヴァイオリニストは自分の出している音を聞くことができませんから、自分がこうだと思っているのと、相手に伝わっている音というのはやはり差があるものだと理解しておかなければなりませんね。

この主観と客観のギャップというのが自分はいい音だと思っていたら相手には「しずかちゃんのヴァイオリン」状態だったりするわけですから、このギャップをどう克服するかというのはヴァイオリン奏者永遠の課題だと言ってもいいでしょう。

実際にプロのヴァイオリニストの演奏をコンサートホールなり動画サイトなりでチェックしてみると、やはり盛り上がる場面では駒の近くで演奏し、しっとりとした場面では柔らかい音を出そうとして指板寄りのあたりで弓を擦っていることが確かめられます。何もしていないように見えて、プロはそういうところで工夫をして(しかもいろんな演奏パターンを準備し、使い分けて)他の演奏と差別化を図っているんですね。

しかし集合住宅などに住んでいる人は、ミュートを使って練習しているということもあるでしょう。
駒にミュートをかぶせると、それが邪魔になってどれくらい弓を駒に近づけたらいいか視覚的に把握することができません。なんてこった!  対応策としては、もうミュートを外して強い音を出す練習をするか、上から不自然な姿勢ではありますが覗き込むとか、私にはそれくらいしか思い浮かびません・・・。

ちなみに小野アンナがとある弟子の一人に「ロマンチカル、ロマンチカル」と口を酸っぱくして指導していたそうです。弟子は一体何を言っているのだろう? といろんな国の辞書を調べても答えはわかりませんでした。だいぶ時間が経ったあとで、「コマノチカク」という日本語にすぎないことに気がついてヘナヘナとなったとか・・・。(このエピソードは『回想の小野アンナ』で紹介されていました。)