ぼっち@3_bocchi
本日八王子にて鑑賞しました。
2021/08/31 22:14:58
ブラボーができない時節柄、立ち上がって拍手する人も。
芸術に値段とかコスパを持ち込むのは無粋とは知りつつも、これだけ有名バレエの名場面を堪能できて7,000円は安い! https://t.co/CjYev5h1If
2021年8月中旬~下旬にかけて行われた「ロシア・バレエ・ガラ2021」。
バレエというと『白鳥の湖』とか『くるみ割り人形』とか『眠りの森の美女』といった有名な作品なら誰でも名前がすぐに思い浮かびます。
ではその他は? 『ライモンダ』、『海賊』、『ドン・キホーテ』、『ジゼル』って知ってますか? と尋ねるとリアクションに詰まる人も結構いるのではないでしょうか。
小さい頃にバレエを習っていたという人なら知っていて当然でしょうけれども世の中の大半の人はそうじゃありませんね。
男性ならとくにそうでしょう。『ジゼル』なにそれ。それが普通の人の感想でしょう。
でもバレエの世界を垣間見てみたい・・・。そう思っている人も多いのではないでしょうか。
私が鑑賞した「ロシア・バレエ・ガラ2021」はまさにそういう人にうってつけのイベントでした。
2021ということはきっと前々から開催されていたイベントであり、おそらく2022や2023があると期待してよいでしょう。
「ロシア・バレエ・ガラ2021」、バレエの世界への入口にぴったり
なにしろ当日のプログラムが、ロシアバレエの見どころを集めましたという感じがします。
「眠りの森の美女」ローズ・アダージョ
「白鳥の湖」第2幕よりアダージョ
「人形の精」よりパ・ド・トロワ
「シェヘラザード」よりアダージョ
「タリスマンのグラン・パ・ド・ドゥ」
「ライモンダ」よりアダージョ
「ドン・キホーテ」第3幕よりグラン・パ・ド・ドゥ 他(https://www.koransha.com/ballet/rossiangala/より)
この他にも『くるみ割り人形』の第2幕のバ・ド・ドゥ(有名な「花のワルツ」の直後、まさにクライマックスで踊る、この作品の見せ場)がプログラムに載せられています。
2021年の場合、出演者はマリインスキー・バレエのプリンシパルであるアンドレイ・エルマコフさんの他、主にロシアのバレエ団のファースト・ソリストやファースト・アーティストなど主力~準主力とも言えるダンサーなど。実力は十分に保証されていると考えて差し支えないでしょう。
『眠りの森の美女』のローズ・アダージョを踊ったのは直塚美穂さん。
彼女はプログラムのインタビューで、ソリストの役が回ってくることが多かったのですねと質問を受け、こう答えています。
入団したときから、ソリスト役が多いと言われていました。コール・ド・バレエは170cm以上の方ばかりなので、背が低いのもラッキーだったと思います。
たしかに客席から見ていると、男性ダンサーとの身長差があるなとは感じましたが、だからこそ逆にまだ16歳(作品の世界では「もう結婚適齢期」なのかもしれないが)の、4人の求婚者を前にして揺れ動く少女から女性への過渡期の感性が、バレエダンサーとしては大きい方ではない身体を逆に「存在感」として活かしながらゆったりとした音楽の流れの中で表現されているように思われました。
『くるみ割り人形』第2幕のパ・ド・ドゥもやはり圧巻。
花のワルツから終幕までを楽しみにこの作品を鑑賞する人も多いはず。
この日踊ったラウラ・フェルナンデスさんとニキータ・キルビトフさんの呼吸もぴったり。こういうメルヘンチックな踊りというのはきっと女性の憧れる世界なんだろうなというのは男の私でも十分理解できます。(他方で、男で身長155cmしかない自分がパ・ド・ドゥをやれと言われたらすぐに女性の重みでグシャッとなるだろうなと余計な空想をしてしまったのも事実。)
最後は『ドン・キホーテ』第3幕よりグラン・パ・ド・ドゥ。
キトリとバジルが踊るこの場面は大きなジャンプや複数回の回転など、ステージの広さを最大限に活用した華やかなもの。あくまでもこれはバレエであり、芸術であり、スポーツではないのでそこには「作品を解釈し、自分の身体を用いて表現する」というプロセスが介在することでお客さんに何らかのメッセージを届けなければなりません。
このメッセージは、容易に言語化されないものではありますが、オクサーナ・ボンダレワさん、アンドレイ・エルマコフさんの肉体からほとばしる喜びや幸福感はバレエの醍醐味を端的に表していたと言えるでしょう。
だからでしょうか、終演後に立ち上がって拍手をするお客さんの姿も。「メッセージ」がきちんと届いた証拠ですね。
このようにロシア・バレエ・ガラ2021は誰もが楽しめる、一言でいえば「ハンバーグ定食」のようなものと言えるでしょう。バレエを習わせている子供のためにも、またバレエに興味が湧いてきたが一体どこから手をつければ、という人にも「劇場に通いたい」という意欲を刺激するいいイベントだったと思います。
今年だけで5回もバレエを劇場で鑑賞しましたが、これからもどんどん実演に接したい、そういう気持ちになるよい一夜でした。
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