新国立劇場にて2021年8月28~29日に開催される「バレエ・アステラス2021」を鑑賞してきました。

この劇場に足を運ぶのは2ヶ月前の『ライモンダ』以来のこと。おそらく今年はあと1,2回ほど行くことになるはずです。

それはさておき「バレエ・アステラス2021」は、会場で配布されていたパンフレットによると
世界各国のカンパニーで活躍する若手日本人ダンサーを応援したいという思いから開催されてきたバレエ・アステラスですが、長引く感染症の影響を考え、今年は特別に参加資格を海外で活躍中および日本に帰国して3年以内の方まで拡大させていただきました。
とあります。このパンフレットを読むと、過去には英国ロイヤル・バレエでプリンシパルを務める高田茜さん、平野亮一さんも出演していたようです。これは期待が高まります!

開演前には、
本日8月28日(土)の「バレエ・アステラス2021」公演につきまして、28日午前中に新国立劇場バレエ研修所の研修生1名が発熱したため、大事をとりまして、研修生全員の出演を急遽見送りました。 バレエ研修生及びゲストダンサーの出演を楽しみにされていたお客様には心よりお詫び申し上げます。

(新国立劇場公式サイトより)
このようなアナウンスがあり、一部公演内容および順序に変更がありました。これも舞台は生ものであるだけにやむを得ない事情だと思います。ガクッ・・・。
(その後、検査の結果新型コロナウイルス感染症は陰性と判明したので29日は通常通り実施される模様。)

それはさておき、いざ始まってみるとハイレベルなパフォーマンスの数々に思わず引き込まれてしまうものばかり。チケットを2日連続で確保しなかったことを少し後悔してしまいました。

中でも目を引いたのが『海賊』第2幕よりバ・ド・ドゥ。元スロバキア国立劇場バレエ団の上中佑樹さん、スターダンサーズ・バレエ団の塩谷綾菜さんの息のあったダンスにはうっとりとなります。
海賊ってこんなに優美な職業だったのか・・・、知らなかった。海賊というからには、ソマリア沖に行けばきっと会えるかな・・・、などと勘違いも甚だしい余計な空想が膨らみました。
(注:外務省のHPによると、ソマリア沖・アデン湾及びその周辺における海賊等事案の発生状況は2011年以降激減し、2019年、2020年はゼロ件だとか。これも知らなかった。)

『薔薇の精』ではウェーバーの「舞踏の勧誘」を背景にした踊りが見もの。
一輪のバラを手に思い出にふける少女のもとに開け放たれた窓から薔薇の精が飛び込んできてパ・ド・ドゥを踊るというもの。(予備知識ゼロで見るとオードリーの春日が窓から少女の部屋に突然侵入してきたと誤解する可能性有)
男性でありながら一応薔薇の精という設定なだけにゴリゴリの男らしい体力をアピールするかのような踊りでは現実に引き戻されてしまいます。
こちらも牧阿佐美バレヱ団のファーストソリストであり、元ポーランド国立バレエ団の水井駿介さんが見事に世界観を表現。
曲がまだ終わってないのに拍手がはじまるのは「舞踏の勧誘」あるあるですね。

最後には『ライモンダ』のパ・ド・ドゥ。
新国立劇場バレエ団のプリンシパル渡邊峻郁さんん、ファースト・ソリストの柴山紗穂さんの息のあった優美かつ精緻な踊りは見事というほかありませんでした。
このパ・ド・ドゥが盛り込まれている第3幕は、ライモンダとジャンの結婚式が行われるというもの。
物語の舞台がハンガリーなだけに民族らしさも、またクラシックバレエの要素も両立させていなければならないだけに、表現者としては工夫の見せ所でしょう。

『ライモンダ』はそれほど上演頻度が高いとはいえないだけに(それでも部分的にとはいえ私は今年2度めなのだが)、このパ・ド・ドゥを見ることができたのは貴重な機会でした。個人的には手をパチンと打ち鳴らす場面の腕の動きが非常に優美というか、たおやかというか、時間にしてみれば1秒ほどですがこのピンポイントな箇所にハッとさせられました。

「バレエ・アステラス2021」に出演している方たちは、おそらく全員が私より若い方のはずです。
しかしなんという高水準な踊りであったことでしょう、非常に充実した2時間を過ごすことができ、今後の若手バレエダンサーたちの躍進が大いに期待できそうだという思いになりました。