2021年6月5日~13日に新国立劇場で開催されたバレエ『ライモンダ』は、東京フィルハーモニー交響楽団の素晴らしい演奏ともあいまって、見ているだけで別世界へいざなわれてしまうような錯覚を覚える素晴らしい3時間でした。

私は最終日13日の公演を鑑賞しましたがもうこれがプリンシパルの米沢唯さん、福岡雄大さん、ソリストの中家正博さんの踊りの端正そして精緻なこと!

一つ一つの動きの確かさには基礎的な技術力の充実ぶりをうかがわせ、なおかつその動きに意味を持たせようとする強い意志をも感じさせるものでした。

主役級の実力はもちろんのこと、群舞においても集団としての動きの統一が高いレベルで実現していることももちろん見逃せません。バラバラになるようなヒヤリとする場面は何一つなく、すべてが破綻なく進行していく安定感は素晴らしいの一言に尽きます。

会場で配布されていたリーフレットには牧阿佐美さんの「『ライモンダ』改訂振付にあたって」というメッセージが寄せられています(2004年初演時の再編集)。
ここには舞台美術について「中世のおとぎ話を紐解くような幻想的な世界に」という言葉があり、たしかに衣装や舞台装置も中世の絵画でよく見かけるであろう十字軍などを連想させるような馬に乗った騎士などが用いられており、グラズノフの音楽に盛り込まれた異国情緒を掻き立てるもの。

音楽面でも東京フィルハーモニー交響楽団の演奏は中庸を得た、目立ちすぎず、またダンスを煽るようなところもなく、しかも弦楽器群の音色の充実は作品鑑賞中最後の一音まで高級感を作品にまとわせていました。

もともと『ライモンダ』自体披露される頻度がけっして高いわけではなく、次に鑑賞できるのは何年後だろう(そのとき、チケットはちゃんと確保できるのだろうか?)というもので、その意味で今回きわめてレベルの高い踊りを見ることができたのは本当に貴重なひとときでした。