NHKオンデマンドで視聴できるNHKスペシャル「日本人はなぜ戦争へと向かったのか 第3回 “熱狂”はこうして作られた」。

日本が戦争へと突き進む中で、新聞やラジオはどのような役割を果たしたのか。新聞記者やメディア対策にあたった軍幹部が戦後、開戦に至る時代を振り返った大量の肉声テープが残されていた。そこには、世界大恐慌で部数を減らした新聞が満州事変で拡販競争に転じた実態、次第に紙面を軍の主張に沿うように合わせていく社内の空気、紙面やラジオに影響されてナショナリズムに熱狂していく庶民、そして庶民の支持を得ようと自らの言動を縛られていく政府・軍の幹部たちの様子が赤裸々に語られていた。

(https://www6.nhk.or.jp/special/detail/index.html?aid=20110227より)

この番組では、満州鉄道の爆破は関東軍のしかけた謀略であるということを新聞社は知りつつも、太平洋戦争が終わるまで報道しなかったと伝えています。
きわめて重要な事実を知らされなかった国民は満州権益を正当なものと信じ込んでしまい、やがてこのとき生まれた熱狂が軍、国民、そしてメディアの相互作用によって増幅され、ひいていは言論の自由が消滅し、日本を破滅に追い込んでしまうのでした。

このような状況になってしまった理由は明快でした。
世界恐慌によって部数を減らした新聞社は、軍の主張に沿った強硬論を掲載すると部数が伸びることに気づいてしまったのです。

なぜか。
これも答えを知ってしまうと「なるほど」とストンと腑に落ちる話です。
息子を兵隊に取られた父母が「日本軍、華北で中国に圧勝」のような記事を歓迎したからです。
逆に、「こんな戦争はくだらない」のようなことを書いてしまうと、「息子が最前線で命がけで戦っているのに、何事だ!」という反発そして不買運動に結びついてしまうからでした。

こうして毎日強硬論ばかり読んでいると世論もそちらの方へ傾いてしまい、そういう意見をもつ国民の支持を得るため政府・軍の幹部たちは自らの言動が縛られていくのでした。
もうこうなってしまうと雪だるま式にムーブメントが増幅され、「そういう意見」以外なにひとつ認められない社会になり、言論の自由が失われてしまうのです。

藤井聡・京都大学大学院工学研究科教授は京都のラジオで、「コロナについて事実を伝えるとポリコレ棒で叩かれる」ということを発言しています。



「歴史は繰り返す」という言葉がありますが、これは構造が繰り返されるということ。
新型コロナウイルス感染症をめぐる報道でも、やはり「強硬論」というか、統計を無視し過剰に恐怖を煽るような伝え方がなされていたのは記憶に新しいでしょう。

その結果緊急事態宣言を始めとする政策が(主に都知事・世論の突き上げで)実施されることになりましたが、こうした感染症対策を実施することの副作用として現れるであろう雇用や経済への影響、うつ、DV、自殺の増加、教育機会の逸失、税収減、少子化の加速、日本国憲法との整合性といった負の側面はほとんど議論されませんでした。
そして一度実施した政策や行動様式の変容が国民の間に浸透してしまうと、しかもその期間が長ければ長いほど間違いを認めて方向転換できなくなってしまうのです。

日中戦争においても、太平洋戦争開戦までにおよそ18万人の戦死者を出しており、これだけの損失を受けて中国から撤兵するとは何事だという強硬論が幅をきかせ、政策の失敗を総括できなかったことが日米交渉がつまづく一因となったことは忘れてはなりませんが、こうした苦い教訓が生かされないまま上述のような愚行が繰り返されてしまいました。

「真実は太陽光と同じ」。そのココロは「まぶしくて直視できない」。
原発事故のときと同じく、専門家と称する人びとも自らの間違いを認めていません。メディアも、政治家も、そして国民も・・・。

ファシズムであったり、全体主義であったり、そういう言葉は歴史の本の中だけだろうと思っていましたが、まさか2020年~現時点に至るまで同じようなことが起こるとは予想していませんでした。
この一連の出来事は歴史の一コマとしてしっかりと見つめ、また可能な限りブログ記事のような形で自分なりに考えを整理して書き残しておこうと改めて思いました。