2021年5月29日のコンサートをもってHKT48を卒業した森保まどかさん。1期生としてグループの活動を支えてきた歩みもとうとうこの日をもって役割を完全に果たし終えました。

私が彼女を知ったのはラジオ番組「FMまどか」。
私が日々取り組んでいるヴァイオリンの練習というのは砂を噛むようなもので、とくに音階練習はヘ長調だったり変ホ長調だったりト短調だったり、色々な調性で何オクターブも弦の上を行ったり来たりしなければならないという、好きじゃなければとてもやってられない(だから挫折者多数)もの。

音階練習のあとはエチュード(練習曲)。曲ごとに身につける技術が決まっているものの、同じパターンの動きを色々な弦や音の高さで繰り返すのでこれも辛い。

こういう練習の間、ラジオ番組をタブレット端末で聴いているのですが偶然めぐりあったのが森保まどかさんがパーソナリティをつとめる「FMまどか」でした。

おっとりとした柔らかい口調とほどよい空気感はヴァイオリンの練習で殺伐とした気分になりがちな私の心を和やかにしてくれるものでした。
フォトブック『スコア』ももちろん入手し、ページをめくってみると・・・。

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ラストフォトブック『スコア』。人は変われる

多くの写真は森保まどかさんの思い出が詰まった福岡各地で撮影されています。
ページをめくるごとに写し出された笑顔の数々は屈託のないもの。その表情からはゴールまでたどり着いた満足感のほかにもこれが最後であることを意識しているかのようなはかなさと、その後も続くであろう日常を待ち望むかのような明るさをも読み取れるではないでしょうか。

秋元康さんは推薦文に「いろいろな表情の彼女自身が美しいコンチェルトのSCOREに思えて来た」との言葉を寄せています。

スコアの意味は、総譜。私がこの『スコア』に何らかのピアノ協奏曲(コンチェルト)のスコア=総譜をイメージするとしたら、ためらいなくモーツァルトの『ピアノ協奏曲第27番 変ロ長調 K595』を挙げます。




この曲はモーツァルト最後のピアノ協奏曲であり、春の光に包まれるかのような愉悦感のなかに、しかし自分自身は来年の春を迎えることはできないことを悟った諦観すら湛えています。『スコア』で1期生たちが並び立っているページの表情は、『ピアノ協奏曲第27番』の音風景を連想させるものがあります。

森保まどかさんは10年にわたるアイドル生活を応援してくれたファンの皆さんへの感謝の言葉を述べつつ『スコア』を締めくくっています。
アイドルになる前はピアノのコンクールに明け暮れ、勝ち負けの世界のなかで生きていたこと、アイドルになってからは勝ち負けがすべてではないこと、同期や先輩そしてファンと育まれた人間関係のなかで得たものが多かったこと・・・。こうした感慨はアイドルにならなければ心の中に芽生えてくることはなかったでしょうし、その思いを胸に歩みだす次のステップはより自信に満ち溢れたものであることは間違いないでしょう。

さらには、1人のアイドルを見守っていた「福岡」もまたこの本のもう一つの「登場人物」であると言えるでしょう。HKT48というグループは福岡という土地、ここに暮らす人たちの情緒そして郷土が生み出した様々な文化と切り離すことのできないものであり、これらに育まれて森保まどかさんは1人の女性として成長したのですから。

フォトブック『スコア』は、10年というアイドル人生の集大成であるとともに、たとえ知らない世界であったとしても一歩踏み出せば人は変われることを示したものです。その点で、男性ファンだけでなく多くの女性にもまた手にとっていただき、「変わる」ことの素晴らしさを感じ取っていただければと思います。