Cuvie先生のバレエ漫画『絢爛たるグランドセーヌ』は単行本第1巻が2014年3月に刊行され2021年5月現在チャンピオンREDに連載中です。

ウィキペディアによると
優れた観察眼を持つ小学生の少女 有谷奏は、隣家に住んでいる年上の少女・梨沙の影響でクラシックバレエに強い憧れを抱き、かつてフランスでプロ活動をしていた滝本伸子のバレエスタジオに通いはじめる。バレエの楽しさに魅せられた奏は、同じ教室で1つ年上の伊藤翔子や、バレエの英才教育を母に受けてきた栗栖さくら、天性の集中力を持ちながらそれを活かしきれなかった藤田絵麻といった同年輩のダンサー仲間達と出会い、互いに切磋琢磨していく。
というあらすじ。

さて第1巻を読んでみて、私なりに気になったポイントを考えてみました。

仮説と検証の重要性

第1巻の時点でヒロイン奏はまだトウシューズを履くことが認められておらず、バレエシューズを履いています。

そのことに彼女は不満をもちつつも、『ドン・キホーテ』のキューピッドの役を割り当てられ練習に励むうち、あることに気づきます。
バレエシューズでしか踊れないキューピッドもあると。

これはお隣の梨沙の家で男性のソロとコンテンポラリー動画を見て、トウシューズではうまく踏み切れない場面がバレエにはあること、柔らかい足裏の使い方をする局面では不利になることに確信を深め、なおかつ梨沙からトウシューズの現物を借りて履き心地を確認したうえでの気づきでした。

この気づきから検証に至るまでわずか数時間。その日が終わる前にただちに奏は行動を開始し、しかも終わらせています。本当に小学生でしょうか。

このように仮説を立て、検証を行うことはビジネスでも、また科学研究の世界でも基本であり、これができていないと「うまくいかないのは頑張りが不足しているからだ」「もっと突っ込めば大当たりするだろう」というパチンコ脳の世界になってしまいますよね・・・。

奏の検証の成果は単行本第1巻の終わりに見事に現れています。
アレグロなのに動きが大きくて正確!
いやよくよく注目すれば荒削りな部分もあるがまるで男子がやるような溌剌とした動きで見ていて心地いい
第二次性徴前の少年のような体つきの今だからこそ踊れるキューピッド
無邪気でいたずら好きの小さな天使が舞台を飛び回ってる
トウシューズとバレエシューズの違いを自分で実際に確かめたからこそ自信を持って演技することができたのであり、単に努力するだけが練習ではなく、きちんと頭を使えば最短ルートで結果を出すことができるという好例でしょう。

ダルビッシュ選手はこうツイートしたことがあります。
練習は嘘をつかないって言葉があるけど、頭を使って練習しないと普通に嘘つくよ。
うーん、ヴァイオリンを弾いてる自分にとっても耳が痛い!!

うまくいかないのはもしかしてこれが原因なのかも? いやこれじゃない、こっちが悪さをしているのかも・・・。自分の苦手ポイントを集中的にトレーニングしないと、本番で絶対に事故るから、ただ弾くだけじゃなくて崩れやすいところをきちんと洗い出そう・・・。
こういうことを考えながらの練習と、ただ努力するだけの練習では1年後に大きな違いが出るでしょう。

私は最近までバッハとかベートーヴェンとかブラームスなどにもっぱら取り組んでいて、バレエは一応『白鳥の湖』や『眠れる森の美女』などを知ってはいたもののそこまで深入りはしていませんでした。
ところがある時「バレエってミケランジェロとかベルニーニの作品が動き回ってるみたいだ!」と気付き、それ以来どんどん関心を深めていきました。

『絢爛たるグランドセーヌ』も気になってはいたもののヴァイオリンの練習で時間が取れず、ようやく手に取ることができました。さあこれから2巻以降もどんどんページをめくろう・・・。


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